ザ・クインテッセンス 2020年3月号
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はじめに ミラーテクニックが難しいことは,周知の事実である.筆者もそのように感じる.なぜ難しいのか,どのように難しいのかをこれまで具体的に考えたこともなく,その難しさは漠然としたものであった.あるとき,若い歯科医師の先生方からミラーテクニックがうまくいかない理由を尋ねられ,答えに苦慮し,恥ずかしながら,「慣れるしかない」と返答していた.近年,顕微鏡治療が普及してくるにつれ,この手の質問が増えてきた. そこで,自分でもこの手の問題については興味があったので,疑問解決に取り組むようになった.詳しく調べていくうちに,次第に“鏡の不思議”な魅力に引き込まれていった.本稿では,“鏡の謎”に対する私見的考察をふまえ,臨床において,なぜミラーテクニックが難しいのかを上顎と下顎に分けて具体的に解説する.1.鏡はものを反転させるか? 鏡を覗くと左右が反対になる.これは誰でも知っている現象であるが,この理由は諸説ある.まずは,興味深いところを少し掘り下げてみよう. 左側に髪飾りを付けている少女は,鏡側からはどちら側に髪飾りを付けて見えるだろうか(図1)? おそらく鏡側からは右に見えるという人が多いと思われる.やかましくいうと,鏡の中で左右が反対になっている.なぜだろうか? どうでもよい? 確かにどうでもよいかもしれないが,考えると気になる. われわれも,日々臨床の場で,ミラーを使用することが必須である.また,口腔内写真も撮影し,咬合面用ミラーで咬合面撮影した後に,PC上で反転し,患者さんに説明をしている.このことに「不思議」を感じることは少ないかもしれないが,ほんの少し寄り道をして,鏡の不思議について考えてみてはどうだろうか.荒木秀文Understanding the Characteristics of Mirrors to Improve Mirror TechniqueHidefumi Arakiキーワード:鏡,ミラーテクニック,光学反転,鏡映反射,心のはたらきかた福岡県開業 荒木歯科医院連絡先:〒816‐0851 福岡県春日市昇町5‐84‐1鏡の不思議を理解しミラーテクニックに生かす123the Quintessence. Vol.39 No.3/2020—0663

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