ザ・クインテッセンス 2020年3月号
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今こそ論考する!ニッケルチタンファイルによる根管形成連載(全4回)137the Quintessence. Vol.39 No.3/2020—0677さまざまな根管に対するニッケルチタンファイルのセッティング第3回はじめに 根管形成と言っても,その根管の解剖学的形態は非常にバラエティに富んでいる.理想を挙げるとするならば,すべての歯根が湾曲しておらず,かつ根管の断面形状が正円で,円錐形を呈していれば,根管治療の成功率は飛躍的に向上するかもしれない. しかし残念ながら,根管の形態は必ずしも円錐形を呈していないことは周知の事実である.Wuら1は,下顎第一大臼歯の近心頬側根管において根尖側1/3で92%が根管の形態が正円形ではないことを報告している.これら楕円形を呈している根管の根管形成に関して,手用ステンレススチールファイル(バランスドフォース法)を用いた場合には,61.4%もの非切削エリアが存在することも報告されている2. また,米国歯内療法学会(American Association of Endodontists:AAE)の発行する症例難易度評価フォームでは,30°以上の湾曲を有する根管やS字状を呈する根管,根尖部の直径が1.5mm以上の根管は症例としての難易度が非常に高いと示している3.この症例難易度評価フォームに関しては,図1にて記載をしておくので,根管治療を開始する際の判断基準の1つにしても良いかもしれない. 非定型な根管の解剖学的形態だけでなく,根管の石灰化により狭窄,または閉塞している根管も,日常臨床の根管治療・根管形成を行ううえで頭を悩ませる種である.これらは通常の根管よりも予知性が低いといわれている4.石灰化根管においては,その治療を開始するかどうかの意思決定(ディシジョンメイキング)も重要である. ある調査によると,日本人の既根管治療歯を有する被検者のうち69.8%に根尖部透過像が確認でき,また,根管充填をしてある歯の40%に根尖部透過像が確認できたとの報告がある5.臨床症状の有無は別問題としても,これだけ根管治療の対象になりう1Aホール午前10/18(日)講演者論文4Cホール午後10/18(日)講演者論文連絡先:〒980‐0875 宮城県仙台市青葉区星陵町4‐1*1東北大学大学院歯学研究科口腔修復学講座歯科保存学分野*東京都開業 高田馬場 新田歯科医院連絡先:〒169‐0075 東京都新宿区高田馬場1‐29‐4林 洋介*/八幡祥生*1Movieスマホで動画が見られる!(使い方:P3参照)P140,142,147

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