ザ・クインテッセンス 2020年4月号
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70the Quintessence. Vol.39 No.4/2020—0856特 集 2はじめに 包括歯科治療を行うとき,前歯部被蓋をどのような基準で決定しているだろうか.一般的には,上顎中切歯切端の位置(PIC:the Position of the Incisal edge of the maxillary Central incisors)を顔貌(正面,側貌)や口唇(突出度,スマイルライン,ドライウェットライン等)の基準を参考に左右・前後・上下的な配慮のうえに決定する1.その後,下顎前歯部については,歯槽骨内(ボーンハウジング)での平均的な歯軸傾斜(例:側方セファロにおけるFMIAやinterincisal angleを参考にする)から逸脱しないように歯列矯正や補綴治療によって被蓋を決定する.水平的(オーバージェット:以下,OJと略)および垂直的(オーバーバイト:以下,OBと略)にはいずれも+2~3mmとし,前方および側方運動時のアンテリアガイダンスに上下前歯部を参加させるミューチュアリープロテクテッドオクルージョンの咬合様式で行うのが定石となっている(図1).しかし,この手法は審美的基準や機械的咬合論から導かれた設定であり,機能的側面(咀嚼・発音・嚥下)を十分考慮すると,一律に同じ被蓋関係にすることで機能障害などの問題は起きないのであろうか.咀嚼障害を自覚しない有歯顎Akio Ishii岡山県開業 石井歯科クリニック連絡先:〒703‐8275 岡山県岡山市中区門田屋敷2‐2‐10石井彰夫Reconsideration of the Anterior Over Bite and Over Jet from a Functional Aspect in Comprehensive Dental Treatmentキーワード:鋏状咬合,永続的萌出,咀嚼運動経路,咬断位,咬合小面,カスピッドガイド

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