ザ・クインテッセンス 2020年4月号
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はじめに 一般開業医(general practitioner:以下,GP)は,小児から高齢者まで幅広い層の患者に対し,日々診療をしている.患者と長期に渡ってかかわりあえるというのがGPの特徴でもあり,やりがいでもある.歯科医院にはさまざまな患者が来院し,そのなかには歯列不正や咬合が大きく関与していると思われる成人の口腔内の崩壊を目にすることがある.このような患者の改善にはインプラントや補綴治療を行う必要がでてくるが,それに対応できたとしても,その後のメインテナンスにおいて,大がかりな補綴治療を行った口腔内を長期的に維持安定するには,患者・歯科医師双方が細心の注意を払って取り組まなければならない.すなわち,そのような状況に陥る前に,若い頃からのアプローチが重要だと考える.不正咬合の患者は多く,不正咬合を早期に発見できるのはGPの役割であり,使命であろう. 患者や保護者から歯並びについて相談された時に,かかりつけ歯科医が適切なアドバイスや対応ができないことで口腔内の状況を悪化させる可能性があり,患者や保護者からの信頼関係が損なわれてしまうだろう.本稿においては,小児・成人と不正咬合を早期に発見し,矯正治療を用いてアプローチを行った症例を通して“GPだからこその矯正治療”について述べさせていただく.GPだからこその矯正治療:そのメリットとデメリット GPが矯正治療を取り入れるメリットは多くある.GPは予防やメインテナンスを定期的に行っており,小児から成人まで幅広いライフステージの患者を診ている.定期的に管理していくうえで小児の咬合誘導や成人の矯正も自院で行うほうがスムーズに治療を行える.患者にとっても,う蝕治療,歯周治療,補綴治療,矯正治療が1つの医院で完結できるという利便性の高さがある. 患者は最初にGPの医院を訪れることが多く,定期検診によって口腔内の状況を把握しやすい.そのため,小児の場合は不正咬合になりうる因子を早期大串奈津貴Advantages of a General Practitioner’s Orthodontic TreatmentNatsuki Okushiキーワード:萌出障害,早期発見,下顎後退位,顎関節症,咬合福岡県勤務 ハートスマイル歯科クリニック連絡先:〒818‐0135 福岡県太宰府市向佐野3‐3‐21GPだからこその矯正治療早期発見と治療介入のポイント127the Quintessence. Vol.39 No.4/2020—0913

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