ザ・クインテッセンス 2020年5月号
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  力のリスク診断によって変わる治療計画(第4弾)咬合高径,咬合平面,CRバイトの決定法咬合高径,咬合平面,CRバイトの決定法74the Quintessence. Vol.39 No.5/2020—1114特 集 2Yuki Omori大阪府開業 大森歯科医院連絡先:〒541‐0053 大阪府大阪市中央区本町3‐1‐2 大原ビル2F‐A大森有樹The Procedures to Decide Vertical Dimension of Occlusion, Occlusal Plane and CR Biteキーワード:咬合高径,咬合平面,中心位バイト,力のリスク診断はじめに われわれ人間の歯・周囲組織(歯周組織,顎関節など)に起こるトラブルの原因は,う蝕・歯周病・力(咬合)・医原性の4つが挙げられる(図1)1~3.その中で,う蝕・歯周病に関してはエビデンスも多く存在し,われわれ臨床家もそのエビデンスに基づきそれぞれのリスク分析をし,適切に治療することで一定の良好な治療結果と安定した術後経過を得ることができるようになった. しかし,力に関してはエビデンスが少ないという理由で軽視され,経験的で偏った考えであるという認識をもっている歯科医療人も多いのではないだろうか.何かの宗教(信仰?)やマニアのようなものとしてとらえられていることもある.その反面,筆者が日本の全国各地で力のリスク診断や力のコントロールの講演を行うと,必ずといっていいほどインプラントなどの他のテーマの講演よりも年配の先生方が比較的多く参加されている.これは何を意味するのだろうか.臨床を長年多く経験すればするほど,力によって起こる問題に悩まされているということの表れであろう. 力の分野は,エビデンスが少なく教科書に載っておらず,大学や専門学校で学ぶことができず,情報が少ないがゆえに避けて通ろうとされ,後回しにされ,軽視されてきたと考える.しかし,う蝕も歯周病も,昔はエビデンスがなかったのである.経験的に気づいたことを実験・調査・研究をすることにより,数値化され,有意差や法則が見いだされ,エビデンスとなり,ガイドラインができあがったのである.しかし,力の分野は,う蝕や歯周病やインプラントなどに比べ,可視化や数値化することが大変困難であるがゆえにエビデンスになりにくい分野なのである.力によって起こる問題は,ブラキシズムや咬合などと1対1の関係ではないがゆえにデータ化しにくいのである(図2)4.つまり力の分野はまだまだ発展途上であり,今はエビデンスに起こす過程の段階・時代だというだけなのだ.よってわれわれは力に関して,経験的に・感覚的に強く認識していMovieスマホで動画が見られる!(使い方:P3参照)P78

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