ザ・クインテッセンス 2020年5月号
7/8

“包括的矯正歯科治療”へのいざない隔月連載(全6回)172the Quintessence. Vol.39 No.5/2020—1212東京都開業 AQUA 日本橋 DENTAL CLINIC連絡先:〒103‐0022 東京都中央区日本橋室町2‐4‐1‐4F綿引淳一矯正と補綴の融合と顎変形症への対応第6回(最終回)はじめに 本連載も今回で最終回となる.連載を通じて,包括的矯正歯科治療におけるさまざまな隣接分野を最適化させるポイントを解説してきた. 学生時代,筆者は多角的な診査・診断を駆使して機能性と審美性を追求し,顎顔面形態をデザインする矯正歯科学に魅了され,大学の矯正科に入局した.しかし,実際に矯正歯科学を学んでいくうちに緻密な矯正診断の反面,矯正歯科治療には骨格的(遺伝的)な制限も多く,治療計画を具現化させることが非常に困難であると痛感した. そこで,大学では顎顔面形態を司る遺伝子の支配を,矯正歯科治療によってどれだけ変化させることができるのかを明らかにするべく研究に没頭した.その後,その治療結果をさらに活かすためには,補綴歯科学や歯周病学などを深く学ぶ必要があると感じ,包括的歯科治療を学んだ.そして,全顎的な補綴歯科治療に矯正歯科治療をうまく取り入れた緻密な包括的歯科治療の症例に出会い,衝撃を受けた. 一方,矯正歯科学を改めて見直していくと,矯正歯科医の先人らも,早くから包括的矯正歯科治療の可能性に目を向けていたことに驚かされた.総義歯学から矯正歯科学を発展させたDr. Angle,さらに,近代では多くの補綴医が参考にしている審美的基準を数多く発表したDr. Kokich,そしてわが国では,補綴医の立場から矯正歯科治療の必要性をいち早く説いた山﨑長郎先生など,矯正歯科治療と補綴治療は包括的歯科治療においては切っても切れない関係にあることがわかる1,2. そこで最終回では,筆者が考える補綴と矯正を融合させるために必要なポイントや,顎変形症に対するポイントを解説したい.矯正歯科治療のゴールとは 矯正歯科治療のもっとも重要なゴールは,矯正後に後戻りのない安定した歯列である. Graberは,後戻りのない矯正歯科治療のゴールと4Aホール午前10/18(日)講演者論文

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る