ザ・クインテッセンス 2020年5月号
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FROM INTERNATIONAL JOURNALS今イチオシの海外論文を紹介222この論文,ここに注目 世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大している.しかし,新型コロナウイルスの歯科医院向けのガイドラインがないことから,各歯科医院では手探りで感染対策がとられていると思われる.本総説で紹介されている具体的な感染予防対策は,感染拡大が終息に向かっているとされる中国での中華人民共和国国家衛生健康委員会によって発表されたガイドラインと,新型コロナウイルス感染のアウトブレイクにかかわった四川大学華西口腔医学院での実践経験に基づいている. 日本と中国の違いを考慮したうえで歯科医院での感染拡大の予防に参考にしていただきたい.論文の要旨イントロダクション 2019年12月下旬に武漢市で発生した新興の肺炎感染症は,急速に中国全土および中国以外の24か国に拡大した.そして,2020年1月30日に,世界保健機構(以下,WHOと略)はこの世界的な肺炎のアウトブレイクに関して,国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態であることを宣言した.この肺炎の症状は,発熱,咳,筋肉痛または異常な胸部CT所見をともなった倦怠感が多く,喀痰,頭痛,喀血,下痢の頻度は低かった1,2.2020年2月11日,WHOはこの新しいウイルス性肺炎を「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」と命名した.一方で,国際ウイルス分類委員会は「SARS-CoV-2」と提唱した.新型コロナウイルスの歯科医院における伝播経路 新型コロナウイルスの一般的な感染経路には,飛沫感染(咳,くしゃみ)および接触感染(経口,経鼻,および眼粘膜)がある3.さらに,無症候性感染者との接触を介して,ウイルスの感染が起こる可能性が報告されている4.新型コロナウイルスの潜伏期間は1~14日とされるが,最長で24日にも及んだ感染者の存在も報告されている1,5.新型コロナウイルスのアウトブレイク中は,感染者とかかわった歯科医院や病院内のヒトに対して,図1に示す歯科環境下で感染を伝播する可能性がある.歯科診療のための感染管理①罹患患者のスクリーニング 体温測定は必須事項(非接触型の額体温計を推奨).つづいて,図2の質問紙で罹患患者をスクリーニングする.②手指衛生 歯科診療における手指衛生の重要性が強調されている(図3).また,新型コロナウイルスで糞口感染も報告されている点にも注意が必要である.③歯科医師/歯科衛生士のための個人保護対策 歯科医院および病院では,空中を浮遊する飛沫による伝播が主な感染経路と考えられているため,保護メガネ,使い捨てのサージカルマスク,手袋,使い捨てのキャップ,フェイスシールド,保護服の使用をすべての診療において強く勧める.④歯科治療前の洗口 診察前の洗口剤は,一般的に口腔微生物の数を減らすと考えられている.ただし,歯科診療で一般に洗口剤として使用されるクロルヘキシジンは,新型コロナウイルスに対して効果がない場合がある.新型コロナウイルスは酸化に弱いため,新型コロナウイルスの感染の可能性を含む唾液中の口腔微生物量を減らすために,1%の過酸化水素水や0.2%のポビドンヨードなどの酸化剤を用いた歯科処置前のマウスリンスが推奨歯科診療における 新型コロナウイルスの 感染経路と管理紹介者:近藤久貴(愛知学院大学歯学部薬理学講座)Peng X, Xu X, Li Y, Cheng L, Zhou X, Ren B. Transmission routes of 2019-nCoV and controls in dental practice. Int J Oral Sci 2020;12(1):9.キーワード:新型コロナウイルス,感染経路,感染拡大予防Prosthodontics補綴Periodontology歯周病Operative dentistry保存修復Pharmacology薬理Prevention/epidemiology 予防/疫学Anatomy解剖学Oral maxillofacial surgery口腔外科Infection control 感染管理the Quintessence. Vol.39 No.5/2020—1262

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