ザ・クインテッセンス 2020年6月号
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63the Quintessence. Vol.39 No.6/2020—1353のです.一方,ポステリアガイダンスは直接目視できないため,私たちの意識レベルでのイメージが,たいへん薄いのです.舵を切る! 側方運動の仕組み では,「形態」と「構造」と「機能」の方程式を駆使して,側方運動の実像に迫ります. はじめに,その水平的な要素を解説します.頭蓋に対して下顎骨が移動します(図1).その移動を3か所のガイド部位で考察しましょう.側方運動時,下顎骨の水平的移動の特殊性は「支持領域が3か所」となることです.まさにその移動は,私たちの身近な乗り物である「3輪車」の動きに例えることができます. 「舵を切る」という動作があります.身近な4輪の自家用車は,ハンドリングによって2つの前輪が左右に動き「舵」が決まります.「舵」が決まると運動の方向が決まります.しかし,もっと複雑な仕組みを用いている4輪車があります.特殊車両の消防車は,なんと4つのタイヤが前後別々にバラバラの方向に動きます.この仕組みを「4輪操舵」というのだそうです(図2)1.消防車は,この仕組みによって通常では曲がり切れない細い路地に巧みに入り込み,消火活動をするのだそうです.まさに,下顎運動支持領域の3か所はこのような仕組みで「舵」を取っているのです. すなわち,下顎運動は「3か所操舵」なのです.「3か所操舵」のうち,前方の1輪は歯のアンテリアガイダンス,後ろの2輪は平衡側のポステリアガイダンスと作業側のポステリアガイダンスです(図3). 「側方運動3か所操舵」の車輪のなかには,個人差はありますが,動く角度でバラツキの少ない場所と? まず,上の写真(右側方運動時の口腔内正面観)をご覧ください.患者さんには,右側方運動をしていただきました. さて,ここで読者のみなさんに問題です! この運動のガイドをしている部位はどこでしょうか? その答えは64ページをご覧ください.

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