ザ・クインテッセンス 2020年6月号
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77the Quintessence. Vol.39 No.6/2020—1367れ10,11,咬合採得が成功することで早期接触の予防が可能となる12〜14.また,アンテリアガイダンスを数値し可視化できることから,精確性および再現性に優れ,デュプリケーティングが成功することで咬頭干渉の予防が可能となる.デュプリケーティングとは,現状のアンテリアガイダンスを次装置のアンテリアガイダンスにコピーすることを意味する. また,咀嚼は顎口腔系機能の主要な部分を占めており,科学的な咬合治療には咀嚼能力の客観的な評価パラメータが必要となる15.しかし,咀嚼には摂食,咬断,粉砕,混合,食塊形成,嚥下などの種々の機能が包含され,各機能は相互に連携し,影響し合っていることから,各機能を個別かつ客観的に評価,判定するには多くの問題を抱えることになる.一般的には,咀嚼試料を咀嚼して咀嚼能力を直接判定する方法が標準化されており,その代表的な検査としてはグルコース溶出量分析による咀嚼能率測定が挙げられる. 咀嚼機能の回復や改善を目的としている補綴歯科治療は,咬合の再構成を施しただけで治療が成功するわけではなく,術前後における咀嚼機能を定量的に評価し,治療効果を比較判定しなければならない.したがって,咀嚼機能を定量的に評価するデジタル式検査機器が不可欠であるといえよう16,17. デジタル式咬合検査機器を使用することで,咬合接触域を咬合接触点と咬合近接域に視覚的に区別したり,咬合接触点における最大咬合力を数値化したり,顎運動の軌跡や咬合相に相応する咀嚼運動終末位を視覚性に観察することができる.また,顎間記録の際に下顎位を図示し,顎間記録の精度を高めることもできる.デジタル式咀嚼機能検査を使用することで,咀嚼能率を直接的に評価したり,咀嚼に関与する咬合小面を観察したり,咀嚼に必要な咬合力を計測したり,咀嚼運動路パターンを区分することができる.このように客観的な評価をすることで,補綴歯科治療の質を担保することが可能となる.したがって,補綴歯科治療を可視化できるデジタル式検査機器も立派な“デジタルデンティストリー”の一員なのである.表1 咬合検査ならびに咀嚼機能検査に適合するデジタル式検査機器.咬合検査咀嚼機能検査●シリコーンブラック検査法(咬合接触分析)●咀嚼能率測定(グルコース溶出量分析)●咬合接触圧検査法(咬合力分析)●シリコーンブラック検査法(咬合接触分析)●下顎運動検査法(下顎運動分析)●咬合接触圧検査法(咬合力分析)●顎間関係記録(咬合分析)●下顎運動検査法(下顎運動分析)

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