ザ・クインテッセンス 2020年7月号
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63the Quintessence. Vol.39 No.7/2020—1595図1 筆者が考える高齢者の欠損補綴に対する原則.1)RPDにおける初期治療ですでに決定されてしまい,インプラントまたは歯牙移植を用いない限り6,歯科医師はその状況を受け入れて設計面で対応することしかできない. その点,補綴前処置は,術者の対応がその後の機能回復と予後に大きく影響を及ぼすものであり,臨床的に価値が高いと筆者は考える. そこで本稿では,RPDの補綴前処置にフォーカスを当て,1)RPDにおける初期治療,2)RPDにおけるマウスプレパレーション,3)RPDにおける歯周病学的アプローチ,4)治療用義歯の応用について,実際の臨床例を提示して考察を加えたい.初期治療→補綴治療のプロセスが大切 欠損補綴臨床を行う際,最初に診査・診断しなければならないのは,補綴の設計ではなく,現状に陥ってしまった原因とそのコントロールである.欠損の原因となる疾患は,う蝕と歯周病の場合が多いが,それ以外にも外傷,咬合,全身疾患,先天性疾患,医原性の原因などさまざまなものが考えられ,確実な診断を下すには,慎重な診査と経過観察が必要となる.筆者が考える高齢者の欠損補綴に対する原則1)原則,多数歯欠損患者に対しては,まず有床義歯を勧める2)初診時にインプラントを希望して来院した場合も,患者の同意が得  られれば,初期治療時に治療用義歯を製作し,装着感,咀嚼機能等  を試してから患者の意見を聞き,インプラントの適応を判断する3)2)を経てインプラントの応用が決まった場合も,患者が許す限り  清掃,修理のしやすいシンプルな設計とする4)1)~3)を原則とするが,以下  3点が考えられる場合には,イン  プラントの適応を考える   ・複雑な補綴設計を回避する場合   ・残存歯だけでは咬合支持が不足    する場合   ・すれ違い咬合高齢者に対して欠損補綴を行う場合,筆者は以下の原則に基づいて治療を行います.

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