ザ・クインテッセンス 2020年7月号
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患者のQOL向上に対する歯科医師の新たな役割睡眠歯科医学を知る―米国の最新情報とその治療の現在―90the Quintessence. Vol.39 No.7/2020—1622特 集 2Mai Miyachiカリフォルニア大学ロサンゼルス校歯学部病院顎顔面疼痛・睡眠歯科医学分野/DENTISTRY TOKYO SINCE 1925 MIYACHI SHIKA連絡先:〒151‐0064 東京都渋谷区上原1‐17‐6宮地 舞The Perspective of Dental Sleep Medicineキーワード:オーラルアプライアンス,睡眠歯科,睡眠障害,閉塞性睡眠時無呼吸 「歯科医師は睡眠治療にいかに携わるべきか?」 米国では,睡眠関連の呼吸障害に対して歯科医師の関心が次第に高まるなかで,この問題がつねに提示され続けてきた. 米国の歯科医療現場では,睡眠呼吸障害に対するオーラルアプライアンス(以下,OA)治療の導入にともない,“OAを装着したにもかかわらず,睡眠呼吸障害が改善しない”,“咬合の変化などの副作用の恐れがある”など,批判的な声が上がった.米国の各大学の歯科医療機関は,睡眠歯科医学に対する教育をさらに推進する一方で,睡眠医学の研究を継続することで多くのデータを収集し,より深く睡眠医療に携わるための体系化された歯科治療法を確立しようと力を注いできた. 2015年,米国睡眠医学学会(以下,AASM)と米国歯科睡眠医学学会(以下,AADSM)は,それまでに発表されたOA治療に関する論文を分析し,睡眠医学における歯科医師の立場を含む臨床ガイドラインを作成した1.AASMとAADSMによって長年蓄積された研究成果が認められ,2017年,米国歯科医師会(以下,ADA)は,AASMによる睡眠歯科に関する声明を承認した2.その結果,AASM,AADSM,ADAの間では,睡眠障害に対する正しい知識を習得し,かつ歯科と医科が密接に連携したうえで睡眠障害を包はじめに

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