ザ・クインテッセンス 2020年7月号
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個体差(SMC分類)を考慮した効果的な修復治療の実践悪化原因の除去による生体治癒能を利用する特別企画特別企画個体差(SMC分類)を考慮した効果的な修復治療の実践悪化原因の除去による生体治癒能を利用するはじめに 臨床では,同様に治療しているにもかかわらず,良好な経過をたどる症例もあれば予後不良な症例もある.その要因の1つとして,症例ごとにもって生まれた個体差があり,リスクが異なることが考えられる. とくにリスクの高い症例では,どれだけ精密に修復治療を行ったとしても,悪化してきた流れを読まなければ,トラブルが生じやすいと予測される.さらに,個体差によっては細心の注意を払ってもトラブルの回避が困難な症例も存在すると考えている. したがって,術後の長期安定を目指すために大切なことは,患者の個体差をパターン認識することで治療の難易度を把握すること,そして崩壊に至った流れを推測し,その原因を取り除くことである. 悪化させた原因を除去することにより,生体には治癒能が働く.この生体の治癒能を最大限に利用した治療を行うことが,効果的な修復治療の鍵となると考えている1~3.1.参考症例 まず,個体差を考慮して崩壊の原因を取り除くことで,必要最小限で効果的な治療が行えた症例を呈示する(図1). 患者は26歳,女性.上顎前歯修復物の脱離を主訴に来院した.同部位の補綴的クリアランスが少なく過去にも再治療を繰り返していた.左側顎関節には最大開口時にクリックを認めた.治療前後の写真を比較すると,口腔内の審美的回復だけでなく,顔貌バランスの改善も認められる.修復後5年であるが良好に経過している.1)診査・診断と崩壊の流れ・治療経過 本症例は外力の影響を受けやすい長顔型(Dolico Facial pattern)であり,問診から不良生活習癖(右下寝の睡眠態癖4~6および噛みしめ癖)が確認された. 中顔面に右からの外圧が加わることで,右側上顎歯列の舌側傾斜(図1b)によりSpeeの湾曲が強くなり,それにともない下顎が左側後方へ偏位し,咬合藤田 亨キーワード:包括歯科臨床,生理学的咬合論,個体差,機能評価,態癖大阪府開業 医療法人藤田歯科・矯正歯科連絡先:〒590‐0985 大阪府堺市堺区戎島町3‐22‐1 南海堺駅ビル3FEffective Oral Rehabilitation Considering Individual Variability(SMC Classication):Utilize Biological Healing Ability by Eliminating the Aggravating FactorsToru Fujita115the Quintessence. Vol.39 No.7/2020—1647

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