ザ・クインテッセンス2020年10月号
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73the Quintessence. Vol.39 No.10/2020—2371「the Debut」掲載症例のサマリー(症例1)症例の概要と経過 広汎型重度侵襲性歯周炎の16年フォローアップケース.患者は当時26歳で,主訴は「歯ぐきがよく腫れてくる」とのことであった.両親ともにフルデンチャーを装着しており,歯周炎で歯が抜けていったことを患者本人が知っていたことから,「今のうちに治しておかないといけない」という気持ちが強かった. 患者は若く,多くの骨内欠損を有していたことから,将来的な骨内欠損を残存させるリスクを排除するため積極的な歯周組織再建的療法を,骨内欠損を有する臼歯部に行った.患者のモチベーションも高く,セルフケアにも真剣に取り組んでくださったこともあり,全顎的にみられた深い歯周ポケットと骨内欠損をほぼ除去することができた.また,前歯部の審美的な不満も解消し,健康的な笑顔を取り戻すことができていた.その後も現在まで,かかりつけ医(奈良県開業,小西正一先生)のご協力もあり,メインテナンスに定期的に来院されている. 時が経つのは早いもので,2008年の「New Essence:the Debut」に掲載されてから12年が経過した.その間にスウェーデン・イエテボリ大学歯学部歯周病科に3年間留学し,ヨーロッパの歯周病/インプラント専門医を取得した.帰国後さらに,社会人大学院生としての歯学博士の取得,日本歯周病学会専門医,日本臨床歯周病学会認定医へのチャレンジなどを通じ,多くの偉人たちとの出会いや学びのチャンスを得て,現在に至っている.まだ自分の臨床が成熟期に入っているとは到底思えないが,少なくとも科学的根拠をベースとしたスタンダードな治療に加え,さらにアドバンスな専門医が手掛けるべき手強いケースと対峙し,日々苦しみながらも,楽しく前向きに過ごしている. 当時の症例がメインテナンス時より約16年を経過しており,良好な結果を得ているためここで報告するとともに,日本に帰国してからの症例も紹介させていただき,考え方の変遷などもお伝えできればと思う.「the Debut」掲載時を振り返って▲2008年4月号掲載「歯周組織再生療法における治療戦略」より.

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