ザ・クインテッセンス2020年11月号
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33the Quintessence. Vol.39 No.11/2020—2573を残さない選択肢もあり,う蝕の程度から,患者の症状,治療の希望,対峙している歯科医師の治療環境,バックグラウンドなどさまざまなものに影響され決定していくものである. われわれ歯科医師は,目の前に対峙した歯髄に対し,本当に最良の治療選択ができているのだろうか? 歯科医師,患者双方にとって価値の高い歯髄保存治療に対し,どのように向き合い,介入していくかについて,ここで再度じっくりと考える必要があるのではないだろうか. 本稿では,深在性う蝕に対しての治療選択について,現時点でわかっていることを整理し,われわれ歯科医師が日々の臨床のなかでどのように向き合っていけば良いのかをあらためて考察していきたい.深在性う蝕の基礎知識11)深在性う蝕の定義 まず,深在性う蝕の定義であるが,2019年に発行されたヨーローッパ歯内療法学会(ESE)のポジションペーパーにおいてあらためて定義されており,「深いう蝕(deep caries)」と「きわめて深う蝕(extremely deep caries)」の2つの名称に分けられた(図3)1,2.「深いう蝕」は,う蝕が歯質の内側1/4(象牙質内)まで達しており,う蝕と歯髄の間にデンタルエックス線上で歯質が存在するもので,処置中に露髄のリスクのあるものと定義されている. 一方で「きわめて深いう蝕」は,う蝕が歯質全体を図1図2⁃う蝕除去後に露髄がない窩洞とう蝕除去中に露髄が起きた窩洞⁃ESEのポジションペーパーによる深在性う蝕の定義図1 う蝕除去後に露髄がない窩洞.う蝕を取りきって健全象牙質が一層介している場合,治療選択に迷いはなく,その手技も明確である.図2 う蝕除去中に露髄が起きた窩洞.露髄が起こると,露出した歯髄をどう扱い,どのような方向性で治療していくかについて大きく意見が異なってくる.図3a,b 深在性う蝕は,ESEのポジションペーパーでは2つに定義されており,「深いう蝕(deep caries)」と「きわめて深いう蝕(extremely deep caries)」に分けられる.a●う蝕は歯質の内側1/4まで達しているが,デンタルエックス線上ではう蝕と歯髄の間に歯質が存在する●処置中に露髄するリスクあり深いう蝕(deep caries)b●う蝕は歯質全体を貫通し,デンタルエックス線上では,う蝕と歯髄の間に歯質は介在していない●処置中に100%露髄するきわめて深いう蝕(extremely deep caries)

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