ザ・クインテッセンス2020年11月号
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Co-existing with SARS-CoV-2:新型コロナウイルス時代の提案口腔からのモデリングアプローチによる感染対策特別寄稿102the Quintessence. Vol.39 No.11/2020—2642はじめに: 新型コロナウイルスが変えた日常 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はわれわれの生活を一変させた.2019年12月に中国・武漢市で患者が確認されてからまたたく間に世界中に拡散し,世界保健機構(WHO)は2020年3月にパンデミック宣言を行った.WHOによれば7月7日現在では全世界での感染者数は11,522,756名に達し,死亡者は535,025名と報告されている1.わが国でも感染者20,061名,死亡者978名に至っている2.これまで,国内では水際対策から緊急事態宣言,解除を経て,経済活動と新型コロナウイルス対策との両立という課題にフェーズをあげて一定の抑制効果を示しているが,いまだ感染者数は増加の一途をたどっている.このような状況のなか,人びとはマスクをして三密(密閉・密集・密接)を避けるという感染や飛沫に対する知識を身に付け,日常の行動すべてにおいて感染症予防を徹底することが常識となった.加えて,これまで一向に進まなかった職場や在宅勤務におけるテレワークやビデオ会議が一気に浸透していくなど,社会や生活のあり方,価値観といったものが急変しつつある.新型コロナウイルスと歯科医療現場 新型コロナウイルスの感染が蔓延した状況のなかでも,歯科医師は幅広い年齢層の患者に対応し,診療を行わなければならない.厚生労働省や歯科医師会などからの「標準予防策の徹底」や「歯科診療実施上の留意点」などの注意喚起を受け,われわれ歯科医師は新型コロナウイルス感染予防対策を行ってきた.現場の判断において,たとえば診察室入室前の問診票の記入や検温,待合室におけるソーシャルディスタンスの確保,強力な口腔内外バキュームや,術者と介助者のフェイスシールドの着用,および治療前に患者に対して洗口剤による洗口を励行してきた3~6.緊急事態宣言が発令された当初,歯科医師Chiharu Kawamoto, Ryotaro Yago, Anri Toyama, Rieko Kunii, Noritaka Oga, Takuya Asaka, Nako Maishi, Yasuhiro Hida, Kyoko Hida, Yoshimasa Kitagawa, Hidehiko SanoCo-existing with SARS-CoV-2: A Modeling Approach to Infection Control in Dental Practice*1北海道大学大学院歯学研究院口腔健康科学分野歯科保存学教室*2北海道大学大学院歯学研究院口腔病態学分野口腔診断内科学教室*3北海道大学大学院歯学研究院口腔病態学分野血管生物分子病理学教室*4北海道大学大学院医学研究科循環器・呼吸器外科学教室連絡先:〒060‐8586 北海道札幌市北区北13条西7丁目川本千春*1/矢後亮太朗*1/遠山晏梨*1/國井理恵子*1/大賀則孝*2/浅香卓哉*2/間石奈湖*3/樋田泰浩*4/樋田京子*3/北川善政*2/佐野英彦*1※本稿は2020年8月5日に執筆されたものです.キーワード:新型コロナウイルス,モデリングアプローチ,感染対策

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