ザ・クインテッセンス2020年11月号
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はじめに 著名人の舌がん発表後,口腔がんの認知度は高まってきている.そのため,口腔がん検診の目的で受診する患者は増加し,口腔がんの初期状態で発見される確率が高くなった印象がある.がんは発見が遅れると,治療後の合併症や後遺症に苦しむだけでなく,生命を脅かす.そのため,早期に発見するだけでなく,口腔潜在的悪性疾患(旧名称;口腔前がん病変,口腔前がん状態)も適切に管理し,患者を正しい道に導く臨床力をつける必要がある.この口腔潜在的悪性疾患のなかでも,口腔扁平苔癬は原因が明らかにされていない慢性難治性炎症性疾患である.その治療は長期化することが多く,完治を目標とする治療がないのが現状である. 今回,口腔扁平苔癬に対して使用したグリチルリチン酸モノアンモニウム(Monoammonium Glycyrrhizinate:以下MAG)を含有する歯磨剤(商品名:カムテクト,グラクソ・スミスクライン)によって,病変の著明な縮小を認めた症例を経験したため,その概要を報告する.口腔扁平苔癬の特徴と鑑別疾患 口腔扁平苔癬は口腔粘膜に網状や斑状の白色病変で,慢性に経過する炎症性疾患である.ときにびらんや潰瘍をともなうため,接触痛や摂食時の不快症状があり,日常生活に支障をきたすことがある.口腔扁平苔癬の有病率は1.27%といわれ,やや女性に多い.両側の頬粘膜に多く発症するが,歯肉頬移行部,舌縁部,歯肉縁,口唇,口角部にも発症する.原因は不明とされており,細菌やウイルスの感染,薬物,精神的ストレス,内分泌異常などとともに,歯科用金属アレルギーの関与が考えられている.口腔扁平苔癬の平均悪性化率は1.09%と報告されており,口腔潜在的悪性疾患とよばれるため,定期的な経過観察が望ましい1. 鑑別すべき白色角化性病変として,白板症と口腔山城崇裕New Approach to Cure Oral Lichen PlanusTakahiro Yamashiroキーワード:口腔潜在的悪性疾患,口腔扁平苔癬,カムテクト,グリチルリチン酸モノアンモニウム福岡県開業 やましろ歯科口腔外科連絡先:〒811‐3218 福岡県福津市手光南1‐9‐10口腔扁平苔鮮を治癒に導く新たなアプローチ121the Quintessence. Vol.39 No.11/2020—2661

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