ザ・クインテッセンス2020年12月号
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73the Quintessence. Vol.39 No.12/2020—28551.矯正治療の要否を考える前に治療介入の大きさを考える いうまでもないが,歯列が整っていることは審美性,機能性,清掃性など,さまざまな点において優位である.しかし矯正専門の歯科医院と違い,GPのもとには初めから矯正治療を希望して来院する患者は少なく,歯列不正を有する患者のすべてに矯正治療が必要とされるわけでもない. それでは,矯正治療の要否をどのように見極めればよいのだろうか(症例1,図1).これを考える前に,全顎的な検査・診断を行い,その診断結果から局所的な治療介入でよいのか,それとも全顎的な治療介入(咬合再構成)が必要なのかという「治療介入の大きさ」を決めていくことが非常に重要である. 筆者は,その治療介入の大きさを決める判断材料として「長期的な視点にたっての咬合的リスク」を最重要視している.そして,そのリスク評価にきわめて有用なのが,McNeill1が示し,本多2が細分化した「咬合の生理的なステージ分類」(図2)である.これは患者の咬合状態を,①生理的咬合,②潜在的病的咬合,③顕在的病的咬合,という3つのステージに分けて評価したもので,診断時に咬合リスクを言語化するうえでは非常に有用なものとなる. これら3つのステージそれぞれの治療介入の要否 読者のみなさんは,この症例の上顎前歯部の再補綴について,どのような治療計画を立案しますか?  また,矯正治療は必要でしょうか? 不必要でしょうか?  筆者が行った治療については75ページをご参照ください!図1a図1b図1c図1d図1e図1a~e 患者は52歳の女性.「前歯をきれいにしたい」という主訴で,上顎両側中切歯の補綴治療を希望して来院.口腔内に多数の修復物を認めるが欠損はなく,歯周病の問題もなかったが,上顎前歯部咬合面観(e)からは,右側中切歯の補綴装置に下顎前歯の叢生の影響によると思われる形態的問題が見られた.症例1(次ページにつづく)

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