ザ・クインテッセンス2020年12月号
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はじめに 歯の移植治療が臨床で広く適用されるようになって久しく,長期にわたり良好に経過している症例も多数報告されており,確立された標準的な治療法といえる1〜7. 歯の移植治療は,歯根膜を活かすことができるというメリットがあり,自らの歯を活用できる点は患者にとっては受け入れやすいものである.しかし,一方で,その手技は決して容易ではなく,テクニックセンシティブな面があり,治療後の歯根吸収や骨性癒着という問題点がある.また,移植歯の選択,受給側の状態などから適応できる症例は限定される. その他の歯の欠損に対する治療であるブリッジ補綴に関しては,接着材料の進化によって従来よりさらに治療成績は向上しているといえる.また,インプラント治療に関しては,長年にわたる開発や研究とさまざまな治療法の確立,そして臨床の場での長期的に良好な予後の立証により,インプラント周囲炎の問題はあるものの,欠損補綴のきわめて有効な選択肢であることに議論の余地はない. そんな現状において,歯の移植治療の臨床的有用性について改めて検討すべく,筆者自らの症例を報告することとした.また,歯の移植治療を成功に導くための勘所や注意点などもあわせて紹介させていただきたい.歯の移植を成功に導くための勘所と注意点 歯の移植治療の基本的な術式は従来から確立されているもの3,4,8であるが,筆者の行っている方法から,歯の移植を成功に導くためのポイントを補足的に挙げさせていただく(図1).POINT1移植歯,受容床の詳細な診査と適応可否の的確な判断 移植歯歯根の形態と受容床の歯槽骨形態を詳細に分析する必要がある.歯科用コーンビームCTによる診断は有用である.移植歯の歯根が受容床の歯槽内に三次元的に無理なく収まるかが適応可否の重要な判断基準と考えている.また,術前に受容床の骨岩崎正一郎Clinical Effectiveness of Tooth Transplantation ─The Signicance of Treatment Selection in Patient-Oriented Medicine and the Key Points for Success─Masaichiro Iwasakiキーワード:歯の移植治療,患者本位の医療,移植歯,受容床奈良県開業 岩崎歯科診療所連絡先:〒634‐0078 奈良県橿原市八木町1‐7‐3歯の移植治療の臨床的有用性について考える─患者本位の医療におけるその選択意義と成功に導く勘所─102the Quintessence. Vol.39 No.12/2020—2884

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