ザ・クインテッセンス2021年1月号
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64the Quintessence. Vol.40 No.1/2021—0064Up to Dateパラファンクションの知覚過敏への影響を考える特 集 3知 過敏はじめに 筆者(吉川)が歯科医師になってもうすぐ30年になろうとしている.大学で講義をしていると,自分が学生であったころに教わった知識が新しい知見で更新されていくことに遭遇する.たとえば,くさび状欠損が発生する主原因は,筆者が学生であったころは不適切な歯ブラシの刷掃であったが,現在では過度の咬合力が起因となるアブフラクションが主原因とされ,国家試験にも出題されている. 近年,ストレスによる過度の咬合力(パラファンクション)が口腔内のさまざまな症状の隠れた原因となっていることが指摘されているように感じる.知覚過敏に関しても,既存の治療方法によって改善される症例もあるが,すべての症例で満足のいく結果は得られていない.これはなにかしらの要因を見落としているためではないかと考え,過去の症例を再検討したところ,これまでも知覚過敏を引き起こす1つの要因として考えられてきた「パラファンクション(ここでは主にクレンチング)」に関して,重要な視点に気がついた. 本稿では,従来からの知覚過敏に関する知識を整理しつつ,とくに知覚過敏へのパラファンクションの関与について解説する.1.知覚過敏の分類1)露出した象牙質への刺激による知覚過敏 従来の知覚過敏は,「象牙質知覚過敏」と称されるとおり,象牙質の露出が発生していることが前提となっている(図1).その多くが歯冠歯頸部と露出根面に見られ,また上顎犬歯と下顎切歯部でもっとも頻度が高く,小臼歯にも多く見られる.歯ブラシによる擦過痛,一過性の冷温水痛,甘味痛などが発現することはあるが,自発痛はないのが特徴である.最近では,スポーツドリンクや黒酢などpHの低い健康飲料などの過度の摂取や摂食障害などが原因の胃酸の逆流,口腔乾燥なども原因となり,症状が重Let’s Update your Knowledge for Hypersensitivity of Teethキーワード:知覚過敏,パラファンクション,代償性充血,行動変容法*大阪歯科大学歯科保存学講座連絡先:〒572‐1121 大阪府枚方市楠葉花園町8‐1*1山口県開業 今津歯科連絡先:〒740‐0017 山口県岩国市今津町3丁目12‐10吉川一志*/名島俊樹*1/山本一世*Kazushi Yoshikawa, Toshiki Najima, Kazuyo Yamamoto

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