ザ・クインテッセンス2021年1月号
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定期管理型歯科医院のマネージメント新 連 載124the Quintessence. Vol.40 No.1/2021—0124「患者さんに予防の大切さを伝え,定期管理に導いていけば,患者さんの利益にもなり,医院経営もうまくいく」と信じて,定期管理型歯科医院への転換を実践し始めたものの,次々と壁にぶつかってしまったのです.なかでも問題だったのは,立地に起因する医院の拡張性の低さゆえに,個室型の診療室やコンサルティングルームの設置,ユニットの増設など定期管理型歯科医院に必要な設備を十分に整えられないということでした.そこで,悩んだ末にまた一念発起し,当初の開業地を離れ,別の土地で新規開業するに至ったのです. 医院の移転後は,ユニット3台の平均的医院からメインテナンス患者を増やしていき,ユニット6台で月間患者数1,000名を達成,その後10年でユニット10台,歯科衛生士10名を抱える本院と口腔育成専門の分院を運営するまでになりました. 当り前のことですが,移転による設備面の充実だけですべてがうまくいったわけではありません.予防の患者管理システムだけでなく,教育やスタッフ評価,目標設定と改善のシステムなど医院全体のシステム構築がなければ,医院を成長へ導くことはできませんでした(図1).本連載では,本院の開業からの経営的データを考察しながら,定期管理型歯科連載のはじめに 筆者が院長を務める「スマイルケア西八王子デンタルクリニック」は,東京都八王子市にある親子予防に特化した定期管理型歯科医院です.しかし,当院ははじめから定期管理型の歯科医院だったわけではありません. 筆者は,卒業後に大学の補綴科を経て開業しました.当時の開業地は東京都立川市です.経営は順調でしたが,多くの患者さんが二次う蝕による補綴装置の再治療や進行した歯周病による抜歯後の欠損補綴などの治療のために来院すること,またそのような治療に明け暮れる日々にだんだんと疑問を感じるようになりました.そんなとき,メインテナンス(予防)を中心に運営されている歯科医院の存在を知り,これこそが一次医療を担う歯科医院の役割だと感じました.そこで一念発起し,治療中心だった医院を悪くなっているところを見つける健診,リコールではなく患者さんの口腔内のリスクや生活習慣,家庭環境などを考慮した悪くならないための定期管理,メインテナンスを実践する定期管理型の歯科医院へシフトしていくことを決意したのです. しかし,その道のりは簡単ではありませんでした.牧野泰千東京都開業 スマイルケア西八王子デンタルクリニック連絡先:〒193‐0832 東京都八王子市散田町3丁目8‐19第1回定期管理型歯科医院が増えている3つの要因

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