ザ・クインテッセンス2021年2月号
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残存歯の少ない高齢者に対する一手!オーバーデン 70the Quintessence. Vol.40 No.2/2021—0328Treatment Strategies for Patients with Few Remaining Teeth Clinical Application of Overdentureキーワード:オーバーデンチャー,残根,高齢者愛知県開業 吹上みなみ歯科連絡先:〒466‐0003 愛知県名古屋市昭和区曙町2‐7‐1相宮秀俊Hidetoshi Aimiya特 集 3はじめに 8020達成者が約半数となった現在においても,残存歯の少ない高齢者が来院することは少なくない1,2.そのような患者に対して欠損補綴を行う際には,どのような治療が選択肢として考えられるだろうか? まず,部分床義歯による治療が考えられる.しかしながら,残存歯数が少ない口腔内において部分床義歯を使用する場合,個々の歯に多くの負担がかかり,残存歯の歯根破折や咬合性外傷による歯根膜腔の拡大,歯槽骨の吸収などが起こることも少なくない.さらに歯が傾斜していることが多く,クラスプによる義歯の支持,把持,維持を求めても,義歯の着脱方向に対してアンダーカットが多く発生するため,その治療は困難を極める. またほとんどの場合,残存歯数の少ない患者は歯の位置に異常をきたしている.人工歯排列を行う場合には,その位置が制限され,その後付与する咬合や審美性にも悪影響があると予想される.さらに,残存歯が喪失することで,追歯の際にも審美性や機能性を劣後せざるを得ない状況となるため,妥協した位置に人工歯排列を行うことになる. 以上のことから,残存歯の状態が良好ではない症例においては,天然歯の歯冠にクラスプをかけ,鉤歯として無理に使用するのではなく,オーバーデンチャーの根面板として有効に活用することで,義歯の安定につながる3,4と筆者は考えている. 次に,近年における固定性補綴への患者ニーズの高まりから,インプラントによる欠損補綴も増えている.しかしその後,インプラント周囲炎やフィクスチャーの破折,上部構造の破損など,埋入したインプラント自体が問題となったり,インプラント埋入後,周囲の天然歯に変化が生じてしまうなど,さまざまな問題を多く抱えている5.そこで現在は,顎堤の吸収進行をできる限り遅くし,可能な限りそれを抑制するインプラントオーバーデンチャーによ

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