ザ・クインテッセンス2021年2月号
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臨床応用チャーの71the Quintessence. Vol.40 No.2/2021—0329る治療が有力な選択肢となっている6,7. これらのことから,崩壊した,もしくは崩壊するであろう残存歯の少ない歯列への対応だけではなく,インプラント治療後に生じた欠損に対して再介入が容易なオーバーデンチャーに筆者は着目し,治療を行ってきた.また,天然歯を用いたオーバーデンチャーは咀嚼能力にすぐれるとの報告4もあり,その咀嚼に関しては,天然歯の存在が重要であると示されている8. 本稿では,残存歯の少ない患者のQOLを高めるために行った,残存歯とインプラントが共存したオーバーデンチャーによる治療について,症例をとおして臨床のポイントなどを解説したい.オーバーデンチャーによって得られるメリット,デメリット 残存歯の少ない患者への対応は,苦慮する事項が非常に多い.今回,20~30代の若手歯科医師に実際に苦慮した事例を挙げていただいた(図1).これらと似たような症例において,筆者はオーバーデンチャーによる治療を行い,そのメリットを生かして良好な結果が得られた症例を提示させていただいているので,77ページより参考いただきたい. また,残存歯の少ない口腔内において,オーバーデンチャーとするメリットは多くある(図2).歯の位置異常が起こっている口腔内において,人工歯排列の位置の自由度を高められることは非常に大きなメリットである. 逆に,オーバーデンチャーを外した際の審美性が低い,根面板の存在により,義歯の厚みが十分に取れなくなるなどのデメリットも存在する.しかしこれらは,将来のリカバリーの可能性を含めた患者への入念なコンサルテーションの実践や残根への歯周外科,咬合高径の適正な設定を行うことで,デメリットを最小限に抑えることができる(図3).

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