ザ・クインテッセンス2021年3月号
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歯根膜とインプラントを活用した歯列保持64the Quintessence. Vol.40 No.3/2021—0572特 集 2はじめに 近年,予防歯科医療の普及や患者の歯の健康に対する意識向上もあり,各年齢層における残存歯数は年々増加傾向にある.平成28年の歯科疾患実態調査では,平成17年の調査と比較して1人平均現在歯数はすべての年齢階級で増加しており,75歳以上においてはほぼ倍増している1.今後もこの傾向は続くであろう.これはわれわれにとってうれしい報告であるが,年齢とともにう蝕や歯周病患者の割合が増加する新たな問題にも直面している.さらに歯の欠損や位置異常などの問題が加わると口腔内はさらに複雑化し,対応に苦慮することも少なくない. 欠損部に対しては,天然歯への侵襲や補綴的な負担軽減,審美性の改善等のためにインプラントを活用する機会も増えている.インプラントも欠損歯列の機能回復および残存歯保護の観点から欠かせないオプションであるが,適応が難しい場面も経験する.そこで本稿では,口腔内にさまざまな問題を抱えた欠損歯列の症例を中心に,歯列保持に有効な歯根膜およびインプラントの活用について考察したい.Restoration of a Functional Occlusion by Utilizing Natural Teeth and Dental Implants in Patients with Missing Teethキーワード:歯根膜,インプラント, 歯列保持,自家歯牙移植福島県開業 いがり歯科医院連絡先:〒973‐8403 福島県いわき市内郷綴町榎下55‐1猪狩寛晶Hiroaki Igari

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