ザ・クインテッセンス2021年4月号
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141the Quintessence. Vol.40 No.4/2021—0911エピソード1:歯冠破折はじめに:歯のけがの種類 歯のけがにはさまざまな状態がある.外傷歯は,大別して「破折性の外傷」(図1)と「脱臼性の外傷」(図2)に分類することができる.破折性の外傷は,エナメル質の亀裂(図1a),エナメル質破折(図1b),単純歯冠破折(露髄をともなわないもの:図1c),複雑歯冠破折(露髄をともなうもの:図1d),歯冠-歯根破折(図1e),歯根破折(図1f)に細分できる.脱臼性の外傷は,振盪(図2a),亜脱臼(図2b),挺出性脱臼(図2c),側方性脱臼(図2d),埋入性脱臼(図2e),脱離(脱落:図2f)に細分できる. 外傷歯を主訴とする患者の治療頻度は,歯科医院の立地条件によってまちまちであろう.筆者の医院には年間数十人の新患外傷患者(永久歯の場合)が来院するが,その約6割が歯冠破折である(図1c,d).プロローグで触れたが,外傷患者における不正義は,歯冠破折の治療で多くみられるのもそのためであろう.したがって,エピソード1では,単純歯冠破折と複雑歯冠破折の治療法について,筆者の最新の術式や考えを述べたい.⁃破折性の外傷の分類図1a図1b図1c図1a エナメル質の亀裂(エナメル質にマイクロクラックが生じた状態.臨床症状はなく,通常治療を必要としない).図1b エナメル質破折(エナメル質に限局した歯冠破折.治療が必要ない場合もある).図1c 単純歯冠破折(露髄をともなわないエナメル質-象牙質-エナメル質への破折).図1d図1e図1f図1d 複雑歯冠破折(露髄をともなうエナメル質-象牙質-エナメル質への破折).図1e 歯冠-歯根破折(エナメル質-象牙質-セメント質に及ぶ破折.露髄をともなうものと,ともなわないものがある).図1f 歯根破折(セメント質-象牙質-セメント質に及ぶ破折).

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