ザ・クインテッセンス2021年4月号
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逆根管治療を成功させるには根管解剖の基本的知識と治療の実際?64the Quintessence. Vol.40 No.4/2021—0834Retrograde Endodontics, The Key to Successキーワード:逆根管治療,根管形態,イスムス東京都開業 井澤歯科医院連絡先:〒151‐0061 東京都渋谷区初台2‐20‐1‐2F井澤常泰Tsuneyasu Izawaはじめに 逆根管治療とは,根尖方向から根管を拡大し緊密に根管充填する根管治療のことであり,決して根尖を切除するだけの歯根端切除術ではない. 逆根管治療を成功させるためには,根管解剖を理解することが重要である.しかし“根管解剖”にポジティブな印象をもつ歯科医師はいない.根管標本を見るたびに“こんな複雑な根管を治療することは不可能だ”と誰もが考える.そんな複雑な根管系に対する根管治療だが,マイクロスコープが使われていない時代でも抜髄の成功率は90%以上と報告されているから不思議である1.90%の成功率があれば再根管治療などほとんどないはずだが,再根管治療ばかりなのが日本の根管治療であり,文献の報告と現状とは大きく乖離している. その再根管治療は,根管系の複雑さに人為的なエラーが加わることで成功率は著しく低下し2,治療ができない,あるいは治療を繰り返しても治らない症例にも遭遇する.その時に次の治療法として考えられるのが“逆根管治療”であるが,再根管治療以上に一般の歯科医師にはハードルが高く,正しく行うにはトレーニングが必要である.普段の臨床では“根管解剖”について,根管の数,根管長,根管の太さくらいしか考えないかもしれないが,逆根管治療では,根尖を切除することで出現する未処置の根管,MB2,側枝や根尖分岐,イスムスなどを正確に処置することが必要で“根管解剖”を無視しては完結しない.マイクロスコープやCBCTが普及した昨今ではあるが,それらも万能ではなく,道具が治してくれるわけではない. 本稿では“こんな複雑な根管を治療するには逆根管治療しかない”と興味をもっていただき,歯を保存する一助として,根管治療のオプションに逆根管治療を加えていただけることを期待するものである.特 集 2

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