ザ・クインテッセンス2021年4月号
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乳児期の舌小帯切除 口腔機能改善~500症例からの知見~82the Quintessence. Vol.40 No.4/2021—0852Presentation of the Frenectomy in Infancy to Improve Oral Functions Knowledge from Experience of 500 Casesキーワード:舌小帯切除,乳児,口腔機能,低位舌東京都開業 河井歯科医院連絡先:〒180‐0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町4‐4‐16‐1F河井昌子Masako Kawaiはじめに:舌小帯切除を始めたきっかけ 筆者が舌小帯の切除にかかわるようになったのは,長女の出産の際にお世話になった母乳マッサージの先生に切除を依頼されたためである.先生が独立してお仕事を始めるにあたって,近隣で切除を依頼できるところを探していたという,本当に偶然のきっかけだった. その時の筆者は,卒後10年経過したころで,舌小帯の形態や付着位置によっては発音に障害がでるという知識はあったが,哺乳にも問題がでることがあるということはまったく考えたことがなかった. 依頼を受けてすぐの時期に,母乳マッサージの先生の勧めもあり,筆者の長女も生後3か月で舌小帯を切除した.完全母乳だったので切除による哺乳量の変化を感じることはなかったが,哺乳の際にいつも出ていた「チョッ,チョッ」という哺乳時の特徴的な音が出なくなり,空気を取り込むことから多く出ていたおならの量も激減したことから,切除の効果を実感した. 現状では健康な乳児の口腔内の舌小帯がチェックされることはほぼない.自治体による3〜4か月検診を受診してから当院に来る乳児でも,小児科では乳児期の舌小帯の切除に否定的な見解が出されているためか,「検診では何も言われなかった」ということがほとんどである. 小児や成人の,歯科治療を主訴として来院する患者さんにも,舌小帯による舌の運動制限や低位が見られることも多い.最近になってようやく歯科での口腔習癖の理解も進んできたので,これらの問題にいち早く対応する手段として,乳児期の舌小帯切除を紹介してみたい.特 集 3

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