ザ・クインテッセンス2021年5月号
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根面被覆術の過去と現在歯肉退縮の機序根面被覆術の術式選択VISTAのアップデートLINEUP123435the Quintessence. Vol.40 No.5/2021—10991.根面被覆術の過去と現在 1950年代に歯肉退縮をともなう露出根面を被覆する治療が報告されてから1現在に至るまで,さまざまなテクニックが報告され続けている.最近の論文では,年月の経過とともに根面被覆術の臨床成績が向上していることが理解でき,これは生物学的観点でいえば,血流の保存を考慮したテクニックの改善が行われ続けた結果ともいえる. 種々の根面被覆術のなかでは,歯肉結合組織移植術がもっとも効果的であると論文では報告されており,その歯肉結合組織移植術にはさまざまな切開線のデザインが存在する.そして1980年代から現在に至るまで,歯肉への侵襲が低い切開線のデザインが,より良い治療結果を得ていることをChambroneら2が報告している(図1). 歯肉はとても繊細で,切開を行うことで血流の遮断等が生じて容易に損傷してしまう.軟組織移植術は,治療のアプローチを誤ると,術前より悪化する可能性があるリスクの高い治療だと認識する必要がある. 生体に与える侵襲を最低限にするために,切開線のデザインや縫合数,歯科用マイクロスコープ,ルーペ,マイクロブレードの使用や,治療時間と手術回数が生体に与える影響について議論されてきた.近年のトレンドとしては,根面被覆術および再生療法においても“血流保存”がキーワードであり,血流の遮断を最低限に抑えて,歯肉に対する侵襲をいかに低くするかが,治療の成功の鍵を担っている. このような観点から,以前に提唱されていた根面被覆を目的とした遊離歯肉移植術という選択肢は,199019921994199619982000200220042006200820102012201420162018(年)根面被覆率(%)の平均値(%)100959085807570656055504540Zucchelli et al.Mazzocco et al.Zucchelli et al.Byun et al.Paolantonio et al.Roman et al.Bouchard et al.Romogna GenonJahnke et al.Joly et al.Tozum et al.Rasperini et al.Bouchard et al.Haghighati et al.Bouchard et al.Novaes et al.Wilson et al.Nickles et al. (2010)Aichelmann-Reidy et al.Da Silva et al.Wang et al.Mahajan et al.Bittencourt et al.Çetinet et al. 2003Caesse et al.Jepsen et al.Santamaria et al.Zucchelli et al. (b)Cardaropoli et al.Zucchelli et al.Burkhardt & LangKeceli et al.PaolantonioMcGuire & NunnByun et al.Zucchelli et al. (b)Bouchard et al.Ricci et al.Kuis et al.Zucchelli et al. (a)Zucchelli et al. (a)Keceli et al.Jankovic et al.McGuire & ScheyerTrombelli et al.Caesse et al.Santamaria et al.Bittencourt et al.Zucchelli et al.McGuire et al.Alkan & PariarZucchelli et al.Cortellini et al.Borghetti et al.Burkha: t & LangŁTatakis & TrombelliZucchelli et al.Cheung & GrinTozum et al.Mazzocco et al.Rossetti et al.Bittencourt et al.歯肉結合組織移植術による根面被覆率におけるランダム化比較試験の調査結果図1 1993年から2017年の間に発表された,歯肉結合組織移植術による根面被覆率におけるランダム化比較試験の調査結果をChambroneら2がまとめたもの.49のランダム化比較試験(63グループ)における根面被覆率の平均値は,86.97%±9.68%(範囲は64.5~99.3%)となった(赤線は各年代の歯肉結合組織移植術における根面被覆率の平均値).経時的に歯肉結合組織移植術の根面被覆率が向上していることが理解できる(参考文献2より引用・改変).

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