ザ・クインテッセンス2021年6月号
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“うまくいく”を“たまたま”から“確実”にするために咬合挙上の今あるエビデンスと臨床手技教えます92the Quintessence. Vol.40 No.6/2021—1446はじめに 前回までに3つの咬合挙上の方法を紹介したが,咬合挙上をともなう咬合再構成における,重要なテーマが手つかずとなっている.それは,“咬合平面の修正は必須か?”についてである.第2回に解説したSpearの方法1であれば,咬合高径と前歯部の形態が確定した後,診断用ワックスアップで臼歯部の咬合平面を整え,固定性暫間補綴装置(プロビジョナルレストレーション)に置換していく.この方法は,理想的な審美性,咬合接触,ガイダンスを確保するうえで有用であるが,多くの場合,残存歯すべての歯冠形態の変更をともなう. 一方,Tangerudら2は,咬合治療における目的となる咬合を“治療的咬合(therapeutic occlusion)”と定義し(図1),理想咬合とは別の「許容できる咬合」であるとの考えを示した.咬合平面が乱れたままでも治療的咬合の定義を満たす場合に,「咬合平面の修正は必要ない」と言えそうだが,図1の内容はいささか概念的で,臨床での判断材料としては使いづらい. 最終回の本稿では,咬合挙上にともない咬合平面を修正する際の判断基準を考察し,咬合挙上に関する臨床実感と限界について,筆者らの見解を述べたいと思う.特 集 4咬合挙上にともない咬合平面の修正は必須か?Current Evidences and Available Treatment Options to Increase Occlusal Vertical Dimension Reliably and SafelyPart4. Should We Level the Occlusal Plane Along with Occlusal Vertical Dimension Increasing?キーワード:咬合平面,咀嚼サイクル,カンペル平面,モンソン球面説東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科部分床義歯補綴学分野連絡先:〒113‐8510 東京都文京区湯島1‐5‐45和田淳一郎/若林則幸Junichiro Wada, Noriyuki Wakabayashi第4回(最終回)

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