ザ・クインテッセンス 2021年9月号
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the Quintessence. Vol.40 No.9/2021—2212Tetsuya Suzukiキーワード: 全部床義歯,粘膜調整,咬合調整Adjustment of Denture Base and Occlusal Equilibration to Eliminate the Pains Caused by Wearing Complete Dentures76 無歯顎の難症例化が著しいことから,従来のオーソドックスな手法を避け,さまざまな特殊な術式に飛びつく先生も多いようにも感じられる.そこで,術式や理論が違っても,義歯のあるべき姿は1つとして,ゴールとなるべき義歯の形態について論じた『よい義歯 だめな義歯1』を刊行して久しい.幸いにも提示したよい義歯のイメージ(図1)1は多くの先生方の支持を得て,刷を重ねている.そもそも,義歯はデンチャースペースとそうでない部分から成っている(図2)1.このデンチャースペースでない部分を必要最小限にすることで,じゃまにならないコンパクトな義歯ができあがる(図3)1.ただし,このルールに沿った形態の義歯でも,単独では口腔内のスペースを埋めるにすぎない.義歯は上下顎が適切に噛み合って,はじめて機能する.そこで,つぎに修得すべき技術,知識として咬合(咬合採得,咬合調整)をテーマとした続編の『よい義歯 だめな義歯22』を本年7月に刊行した. これらの書籍で示したルールの下に製作された義歯の形態と咬合が適切であるかどうかの評価は,最終的には患者の主観に負うところが大きく,調整が不十分な場合には義歯の痛みとして現れる.そこで,本稿では“よい義歯だめな義歯のルール”を,実際の臨床にどのように落とし込んでいくのかを,「義歯の痛みへの対応」という課題に絞って解説するものである.鈴木哲也東京医科歯科大学 名誉教授連絡先:〒113‐8510 東京都文京区湯島1‐5‐45特 集 3はじめに「よい義歯 だめな義歯」のルールから学ぶにするための粘膜調整と咬合調整「痛くない義歯」

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