ザ・クインテッセンス 2022年5月号_2
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PMB足場シグナル因子⿟ブースター療法⿟PDGFの作用機序他の組織から分離された体性間葉系幹細胞骨補填材βTCPHAGTR膜歯根膜の内因性体性幹細胞細胞血液供給早期の治癒骨の新生PRGFEMDFGF-2PRGFPRP図1 傷害や出血の後,骨の修復の際,血小板が凝集してサイトカインを含んだ顆粒を放出する.PDGFは創傷治癒カスケードの初期に作用し,初期の組織修復に重要な細胞である好中球やマクロファージを引きつけ,活性化する.PDGFは骨膜や海綿骨,骨髄細胞などに由来する骨原性細胞に対しても分裂促進作用や走化性を発揮する.PDGFが創傷治癒環境に局所的に放出されると,線維芽細胞,骨芽細胞,軟骨細胞,平滑筋細胞などのさまざまな間葉系細胞の走化性や有糸分裂が促進される(参考文献4より引用・改変).図2 1993年にVacantiら6によって提唱されたtissue engin-neringの概念において,シグナル因子にはさまざまなものがあることが報告されている.PRP療法を併用することで,エムドゲインやリグロスなどの作用に加え,さらなる成長因子の助けにより早期の創傷治癒や組織の再生が起きるのではないかと考えている.PRP療法のなかのPRGF療法は,成長因子放出のタイミングを調整することが可能であるため,より効果的ではないかと考えている.69骨の損傷血小板成長因子成長因子前駆細胞血管新生ボーンマトリックスからBMPが放出されるthe Quintessence. Vol.41 No.5/2022—1045成長因子前駆細胞成長因子BMP骨芽細胞成長・増殖成長・増殖変化BMP軟骨細胞 PRGFが他のPRP療法と比較して優位な点は,血小板中の増殖因子を放出するタイミングをコントロールすることができるため,術者のタイミングで増殖因子を活性させることが可能なことである.PRGFから放出されるPDGFの半減期は血中で約30分であり4,臨床的成功を収めるためには成長因子の投与のタイミングが重要となる(図1). では,PDGFなどの成長因子にはどのような作用があるのだろうか.Hollingerら5によると,血小板由来の成長因子であるPDGFは,血管新生,走化性,細胞分裂などの目的で血小板から放出される.また,PDGFは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)をアップグレードし,血管新生を促進させる.さらに,ransforming growth factor-β(TGF-b)も,創傷治癒時の走化性や細胞増殖に関与していると考えられる. 骨形成細胞を呼び寄せ(走化性),その数を増やす(有糸分裂)ことで,骨形成タンパク質(BMP;分化を促す因子)に反応する骨再生細胞の集合体が形成される.その結果,BMPとPDGFは,骨の治癒と再生のための主要かつ強力な共同調節因子となっている6. 歯周組織再生療法で骨ができるのは血餅からであり,骨補填材でもメンブレンでもない.エムドゲインやリグロスは骨ができる過程をサポートしている.筆者らは,Goetzら7が報告した歯周組織再生療法をヒントにPRGFと骨補填材の併用だけではなく,エムドゲインもしくはリグロスを併用することで,より早期の治癒や骨の新生,痛みや腫れの軽減につながると考え,実際に治療に用いることで良好な結果を得ている. 筆者らは,このPRGFの効果を「ブースター療法」(図2)と名付け,近年用いられる低侵襲なフラップデザインを併用することでさらなる血餅の安定を達成しうるのではないかと考えた.1.ブースター療法

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