ザ・クインテッセンス 2022年5月号_2
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図1 「中川の歯式」の一例.Masaki Nakagawaキーワード: パーシャルデンチャー,長期症例,症例分析,補綴設計中川昌樹愛知県開業 まさき歯科連絡先:〒453‐0053 愛知県名古屋市中村区中村町9‐2‐1Learn from Long-Term Follow-Up Cases of Removable Partial Denture:Control of Occlusal Force by Prosthetic Design Using “Nakagawa's Dental Formula”108the Quintessence. Vol.41 No.5/2022—1084 パーシャルデンチャーの長期症例で実績を重ねる著者が,その症例分析法や補綴設計法を解説した書籍『長期症例に学ぶパーシャルデンチャー 包括的医療における設計と臨床』.本稿では,“誌上立ち読み”企画として,本書のChapter 6から一部を抜粋して本誌読者向けに再構成しています. (編集部)12312③4⑤6⑦7 パーシャルデンチャーの臨床において,欠損歯列の診断と評価には過去さまざまな方法が考案されてきた.なかでも,ケネディの分類,アイヒナーの分類,宮地の咬合三角はその代表的なもので,多くの論文においても欠損の診断や評価に用いられてきた.しかし,それらのどの分析法を用いたとしても,その分析結果から個々の症例に即した具体的な補綴設計へと導くには困難がともなう. パーシャルデンチャー設計のポイントは力(咬合力)のコントロールである.義歯にかかる力を残存歯列のどの部位でどのように負担させるかが設計の最大のポイントである.残存歯にかかる力を見極めて,その支台歯のもつ負担能力に応じて支台装置の6543217654321設計をすることが重要である.しかし,従来の各分析法では,現症例がどの分類に属するかは診断できても,具体的な義歯設計には直結しない. そこで筆者は,残存歯のどこにどのような力がかかるのかを具体的に示し,義歯設計のよりどころとなる診断法を考案した.本稿では,パーシャルデンチャー設計における新しい症例分析法,「中川の歯式を用いた症例分析法」を解説したい. 「中川の歯式」とは,欠損歯列のうち臼歯部で上下の歯が対向している咬合支持部位を赤色で記入した歯式である(図1).前歯部は上下が対向していても咬合支持にはなりえないので黒字とする.筆者はこの歯式を用いて症例分析をし,それを基に補綴設計を行っている. パーシャルデンチャーの臨床は,単に欠損に対する補綴設計のみでなく,残存歯の治療(歯周治療,補綴治療,矯正歯科治療)までも含んだ包括的医療に他ならない.そこには,歯科治療全般に及ぶ知識が必要とされる.本稿では,長期症例2症例を示しながら,その包括的医療の臨床について解説したい.特 集 4長期症例に学ぶパーシャルデンチャーはじめに「中川の歯式」を用いた補綴設計による力のコントロール

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