ザ・クインテッセンス 2022年6月号
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ことが重要になってくる. ライフステージをふまえて検査,診断し,治療計画を患者1人ひとりに合わせて考えていくわけだが,その立案時には患者の背景を反映させる必要がある.木原ら4は,患者の年齢に加え,治療に対する患者の意欲,患者の経済面,治療のバイオロジカルコスト(生体のダメージにおける費用対効果)を考慮することを勧めている. 長い人生のなかで歯科治療の優先順位は変化していくため,理想的なゴールを目指せるとは限らない. 筆者は患者の背景をふまえ,ライフステージを大きく4つに分けて考えている(図1,2). 図1,2で示したそれぞれのライフステージにおいて,どのようなアプローチをしていけば良いのか,実際の症例を供覧したい.図1 筆者の考える歯科における4つのライフステージ ライフステージを考慮した包括的歯科臨床は,天然歯列の保全を目的に,メインテナンスしやすい環境を構築すること,患者の将来の安心と安全を提供することに変わりはない.ただし,現在その患者(ライフステージ)にとって何が最適なのかを,つねに考えて治療する必要がある. 実際の臨床では,同じような口腔内状況でも介入するレベルが変わる.つまりそれぞれのライフステージにおいて,「本当に歯列矯正が最善なのか」「いまは補綴介入する時期なのか」「インプラント治療が必要なのか」「根本的な解決には何が必要なのか」を見極め,木(1歯)を見て森(1口腔単位)を見る親の管理下にある若年期親から自立する青年期歯科治療の優先順位が低くなりがちな中年期人生の終末を考える高齢期the Quintessence. Vol.41 No.6/2022—1273551. ライフステージを考慮した包括的歯科臨床10代20~30代40~50代前期60~70代後期80代~

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