デナー・マークII咬合器
- 【読み】
- でなー・まーくにこうごうき
- 【英語】
- Denar MarkIIarticulator
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- 1975年、Guichetにより開発されたアルコン型の半調節性咬合器、全調節性咬合器D5Aの簡易型で、チェックバイトと組み合わせて使用する。この咬合器の特徴は、従来の半調節性咬合器でもっとも重視されていた水平側方顆路角(ベネット角)の調節機構を、イミディエイト・サイドシフトとプログレッシブ・サイドシフトの調節機構に変換して、精度を向上させていることである。この機構は、水平側方顆路の個人差はプログレッシブ・サイドシフトの角度的な大小によるのではなく、側方運動の開始直後に生じるイミディエイト・サイドシフトの量の差によるものであるとするLundeenらの知見を基盤として開発された。同年に発表されたニュー・オクルーゾマチック咬合器にもこの原理が採用されている。
上顎フレームには一対のハウジングが取りつけられ、下顎フレームについている球型の顆頭球がそのなかにおさまっている。ハウジング上壁中央には前方運動路に一致したガイド用の縦溝がつけられている。後壁は後方へ約25度(実測では17.5度)傾斜し、これは過補償の考え方を取り入れるとともに、咬頭嵌合位と最後退位が不一致の症例において、咬頭嵌合位にて下顎模型を付着した場合の作業側顆頭の後方への移動を許す構造となっている。さらに後壁の後傾により、結果としてイミディエイト・サイドシフトがわずかながら前方に向かうようになる。下顎フレームにつけられたセントリックラッチは、上顎フレーム後方中央に取りつけられたセントリック・ロック用のピン前方から嵌合し、しっかりとおさえている。このためセントリックの保持は確実に行なわれる。セントリックラッチは下方に取りつけられているノブを押すことにより、ピンから瞬時に解除できる。この機構はオクルーゾマチック咬合器のセントリックラッチをコピーしたものである。顆頭間距離は110mmに固定されている。ターミナル・ヒンジアキシス・トランスファはできない。矢状顆路傾斜度は0~60度、イミディエイト・サイドシフトは0~4.0mm、またプログレッシブ・サイドシフトは5~15度の範囲でそれぞれ調節できる。
咬合器の顆路指導部の調節にはチェックバイトが用いられる。前方、左右側方、計3枚のチェックバイトを採得し、前方チェックバイトにより矢状顆路傾斜度を決定し、側方チェックバイトで非作業側のイミディエイト・サイドシフトを調節する。1枚のチェックバイトで、イミディエイト・サイドシフトとプログレッシブ・サイドシフトの両方を調節することはできないが、プログレッシブ・サイドシフトを一定(たとえば7.5度)にし、イミディエイト・サイドシフトでベネット角を調節するようにすれば、咬合器の運動路が実際の顆路の内側を通ることになり、咬頭干渉が回避される。2つのサイドシフトの調節機構は事実上役に立つことは少ないが、技工操作時にプログレッシブ・サイドシフトの角度を増して、過補償再現のための運動量の調節を行なうときに、その真価を発揮すると考えられる。
フェイスボウは専用のものが用意され、普通、シンプルボウとして使われるが、付属のイヤピースを取りつけることによりイヤーボウにもなる。シンプルボウとして用いるときには、基準点はリファレンス・プレーン・ロケータで設定する。これによって求められる後方基準点は外耳道上端から外眼角へ向かって前方12mm、下方へ5mmの位置になる。イヤーボウとして用いるときには、プラスチック・イヤピースを直接外耳道へ挿入するだけで、後方基準点が自動的に求められる。前方基準点は右側上顎中切歯切端から上方43mmの位置にとる。これにより設定される水平基準面はアキシス平面となる。
切歯指導桿にはオーバージェット量調節機構のあるものと先端の丸いものの2種類がある。切歯指導板には金属製の調節性切歯指導板とプラスチック製の2種類がある。調節性切歯指導板は樋状で矢状傾斜度と側翼角が調節できる。プラスチック製の切歯指導板には2種類があり、オーバージェット量の調節できる切歯指導桿用と先端の丸い切歯指導桿用とで表面の形状が変えてある。即時重合レジンを盛り指導桿の先端でモールディングして使用する。
フィールド・インスペクション・ゲージを用い上顎フレームと顆頭球の位置を前後、左右、上下に±25μmの範囲で補正できるようになっている。この操作により診療室と技工所にあるデナー・マークII咬合器に互換性が得られ咬合器から模型を外し技工所へ送ることができる。(株)ヨシダから市販されている。