ハノーの咬合5辺形
- 【読み】
- はのーのこうごうごへんけい
- 【英語】
- Hanau Quint
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- 1926年、Hanauにより発表された総義歯に関する総合的下顎運動理論。顆路傾斜と切歯路傾斜を基盤とし、口腔粘膜の圧縮によって引き起こされる咀嚼時の義歯の沈下を考慮しながら、義歯に咬合平衡を与えることを目的として考案された。Hanauは次にあげる5つの要素が一定の法則のもとに関連し合うとき、義歯は調和の取れた機能を営むと考えた。
1)顆路の傾斜 inclination of the condylar guidance.
2)咬合平面の傾斜 inclination of the plane of orientation.
3)切歯路の傾斜 inclination of the incisal guidance.
4)咬頭の高さ heights of the cusp.
5)調節彎曲の程度 prominence of the compensating curve.
Hanauは、これらの要素の関連性を説明し、それを5辺形に図示した。これらの要素は互いに関連し、1つの要素が変わると他のすべての要素がそれによって影響を受ける。Thielmanはこの理論を数式化して、次のような公式をつくり、咬合平衡を得るために咬合5辺形の各要素が果たす役割りを明示している。
咬合の平衡=Co・In/Op・Cu・Oc
Co:顆路傾斜 In:切歯路傾斜
Op:咬合平面の傾斜 Cu:咬頭の高さ
Oc:調節彎曲の程度
この公式によれば、顆路傾斜度は切歯路傾斜度と反比例し、その他の3つの要素と比例する。切歯路傾斜度は顆路傾斜度と反比例し、その他の3つの要素と比例する。また咬合平面の傾斜度、咬頭の高さ、調節彎曲の程度は互いに反比例し、顆路傾斜度と切歯路傾斜度に比例する。咬合5辺形の各要素を定量的に統一してとらえることが難しいため、この理論はさほど実用的な価値をもたなかった。しかし義歯の咬合平衡を得るために、これらの要素が重要な役割りを果たし、互いに関連しているという事実を、わかりやすく表現したところにこの5辺形の意義があるといえよう。