萬人一語

口腔ケアはウイルス対策の武器となるか?!

2020年4月号掲載

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2020年4月号掲載

口腔ケアはウイルス対策の武器となるか?!

 ウイルス感染症と人類の戦いは今に始まったことではないが、新型コロナウイルスは、目に見えない敵であり、いま、人々は戦々恐々としながらその戦いに挑んでいる。この感染症との戦いで大切なのは、正しい情報に基づく予防行動である。インフルエンザウイルスの人への感染メカニズムは、プロテアーゼという分解酵素が必須であり、このプロテアーゼを産生する細菌が口腔内に認められる。特に歯周病原細菌の中には、プロテアーゼを有するものがある。すなわちプロテアーゼ産生菌を口腔清掃で減少させることや唾液中の抗ウイルス作用で中和することは、インフルエンザ予防に一定の効果がある可能性がすでに報告されている。

 それでは、コロナウイルスには口腔ケアが効果的であろうか。重症急性呼吸器症候群ウイルス(SARS-CoV)の細胞への侵入経路は複数あり、プロテアーゼ依存的な細胞侵入を行う経路の存在も報告されている。インフルエンザの感染に特に重要なプロテアーゼと共通する点があるものの、コロナウイルスの感染性を口腔細菌のプロテアーゼが促進するという研究論文は現時点で見当たらない。しかし、プロテアーゼがウイルスの侵入に重要であり、口腔清掃によるプロテアーゼ産生菌とプロテアーゼの除去や唾液によるプロテアーゼの希釈・中和作用を期待した口腔ケアは重要であると考える。

 口腔ケアは、歯科におけるウイルスとの戦いの武器として、ウイルス感染のリスク低減に寄与できるものと信じている。