新聞クイント2010年2月(お試し版)
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2010年2月10日(水) 第170号2今月のニュース今月のニュース医科をリードする研究に取り組む八重垣 健日本歯科大学生命歯学部教授「歯科保健医療に対する人々の価値観の向上を目指したい」 日本歯科大学教授を務める歯科医師・八重垣 健氏。八重垣氏の業績はいまや口臭研究だけに限らない。歯科保健を用いた生活習慣病予防・小児ヘルスプロモーション研究にも取り組む。2008年からは医科領域での再生医療の研究を開始、最近では歯髄の幹細胞から肝臓細胞を作ることに成功した。本欄では、氏の歯科での再生医療にかける思いと研究者としての哲学に迫る。八重垣:現在、歯髄の幹細胞から肝臓細胞の再生に成功し、すい臓細胞もほぼ成功しました。肝臓はすでに動物実験の準備段階に入り、1年ほどで終了させ、難しいですが臨床試験を目指したいと思っています。 乳歯や智歯の抜歯、および歯髄の採取はわれわれ歯科医師の仕事です。歯髄幹細胞による再生医療研究が今後ますます進めば歯科の業務拡大につながります。今まで医療廃棄物として扱われていた歯が国民の命を救うことにもつながる画期的な研究といっても過言ではありません。研究成果次第で、歯科に対する国民の価値観が大きく向上する日も遠い話ではないでしょう。 周知のとおり、再生医療の分野では山中伸弥氏(京都大学教授)らによるiPS細胞の研究が有名ですが、同氏は論文で、肝臓細胞を作るにはあと10年はかかると述べています。私は、歯科が医科研究をリードしていることを社会に周知させ、歯科保健医療に対する人々の価値観の向上を目指したいと考えています。 さて私は大学生の時、口臭のガスクロマトグラフ分析をきっかけに口臭研究を始めました。一時期、大学院で口腔乾燥症の分子生物学的機序を研究をしましたが、その後ブリティッシュ・コロンビア大学、日本歯科大学で口臭の研究を継続しています。 通常、大学院で博士号を取得後、もし研究職を目指すならば、いったん決めたテーマは一生持ちつづけるべきだと私は思っています。これが私の研究者としての哲学です。流行に流されず、同じテーマの研究を長年続けていけば、一生のうちにいくつかは良い研究が出てくるはずです。 実は今回の歯髄幹細胞による再生【プロフィール】1979年、日本歯科大学新潟歯学部卒業。1983年、久留米大学大学院医学研究科(医化学・口腔外科)修了。同兼担助手。1987年から日本歯科大学新潟歯学部口腔衛生学講座講師を経て、助教授。1995年からブリティッシュ・コロンビア大学客員研究員を経て、常勤臨床教授。2004年から日本歯科大学生命歯学部衛生学講座教授。現在に至る。 2009年12月17日(木)、歯科医師会館において、日本歯科医師会(以下、日歯、大久保満男会長)による定例記者会見が開催された。 席上、近藤勝洪副会長は、さる11月25日付けで改正されたレセプトオンライン請求の省令について触れ、「民主党の政権与党としての最大の改善であった」と述べ、完全義務化が事実上撤廃されたことで今まで主張してきた手挙げ方式が実現された与党としての対応に一定の評価を示した。 また、2008年12月にNTTデータと契約を締結した日歯レセコンASPサービス「レセック」の進捗状況について説明し、「レセックそのものの開発はほぼ完成している。ソフト利用規約なども含めた契約の最終調整を行い、2010年1月中の運用開始を目指す」と述べた。 山科 透副会長(日本歯科総合研究機構機構長)は、このたびまとめられた医療計画策定に関する調査結果の報告書について概説した。本調査は、2006年6月21日付けで公布された改正医療法に基づく各都道府県の4疾患(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)に関する医療計画策定において歯科に関する状況を把握するもので、47都道府県を対象に調査が実施された。山科副会長は、本調査の結果について「4疾病と歯科との連携については、各都道府県において温度差がある。今後は、連携パスを含めて日歯も情報発信に努め、医療計画のさらなる充実をすすめていきたい」と述べた。記者会見に臨む堤執行部。 2009年12月18日(金)、歯科医師会館において、日本歯科医師連盟(堤 直文会長)による定例記者会見が開催された。 冒頭の挨拶で堤会長は2009年を振り返り、第45回衆議院総選挙での政権交代から来夏の参院選に組織内単一候補者を擁立しないことを決定したことや、民主党との関係構築などについて述べた。また、政権交代にともなう地方の支持政党の問題については、43都道府県がまだ自民党を支持しているという状況から、「本日の理事会では、地域によってそれぞれの意見および状況が異なるため、調整が充分行われていない意見も出された。2010年3月の評議員会までに意見をまとめたい」と述べた。 引き続き、髙木幹正理事長より、直面している平成22年度歯科診療報酬改定への対応として日本歯科医師会(大久保満男会長)と要望書を作成し、与党へ政策協議を行っていることが報告された。 また、職域代表である石井みどり氏(参議院議員)との関係については、「次期参院選の問題や衆議院選挙など、連携する機会が少なかったため、共通認識が不足していた」と述べ、今後月1回は意見交換を行いながら、緊密な連携を図っていくとのこと。 その後、記者団からの「職域代表の擁立を取り下げた後、民主党から候補者の打診はあったのか」との質問に対して、髙木理事長は「民主党からの正式な話はまだない」と述べた。なお、政権交代にともなう規約・規則の見直しの必要性について、「来年には規約改定の検討委員会を立ち上げる。ただ、現段階での規約を改正するわけではなく、すでに機関決定されている職域代表を擁立しないには該当しない。あくまでも、現行の規約に則ったなかで対応できるか検討したい」と述べた。日歯、定例会見を開催レセコンASPサービス「レセック」は1月中旬以降に運用開始日歯連盟、定例会見を開催次期参院選における支持政党問題について3月評議員会までに意見一致を目指す政 治政 治医療の研究でさえ、口臭・歯周炎の全身への病原性研究から生まれたアイデアでした。私のように同じテーマで研究を続ければ研究の幅も広がり、新境地が開拓できます。 たとえ研究で大きな壁にぶつかったとしても道が閉ざされることはありません。中国では「車到山前必有路」といわれるように、進めば必ず道は開きます。ですから、若い研究者の皆様には研究テーマを安易に変えずに自分の信じた研究テーマを持ち続けていただきたいと思います。 また、日本人がもっとも苦手なクリティカルシンキング(『実践!クリティカル・シンキングのすすめ』が小社で刊行中)を身につけることも必要です。各28,000円(税抜)1セット3本入り18,000円(税抜)平成22年度診療報酬改定、10年ぶりプラス……平成22年度診療報酬改定、10年ぶりプラス…… 絵 山香和信 絵 山香和信

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