新聞クイント2010年2月(お試し版)
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第170号 2010年2月10日(水)3静岡県、「静岡県民の歯や口の健康づくり条例」制定新潟、北海道、長崎に続き4件目、全国で歯科条例制定の動き高まる政 治今月のニュース今月のニュース 保険の窓8020推進財団、「第7回フォーラム8020」開催住民参加の新しい8020運動の展開について意見交わされる社 会 2009年12月12日(土)、歯科医師会館において、財団法人8020推進財団学術集会 「第7回フォーラム8020」(財団法人8020推進財団主催、大久保満男理事長)が開催され、全国から200名を超える関係者が参集した。 第1部「財団指定研究発表会」では、川口陽子氏(東京医科歯科大学教授)による「多目的コホート研究における口腔と全身の健康に関する研究」、佐藤 聡氏(日本歯科大学新潟生命歯学部教授)による「2型糖尿病患者と歯周病との関連研究」、寺岡加代氏(東京医科歯科大学教授)による「入院患者に対する包括的口腔管理システムの構築に関する研究」と題する研究報告が行われた。 第2部「住民参加の新『8020運動』の展開~新たな地域での取組みを目指して~」では、山﨑 理氏(新潟県福祉保健部健康対策課長)による基調講演「新潟県歯科保健推進条例の制定と対策委員会」、清田義和氏(新潟県福祉保健部健康対策課歯科保健係長)による「住民参加の手法を歯科保健計画の作成」、葭原明弘氏(新潟大学大学院准教授)による「は~もに~プロジェクトの支援事業について」の実践報告が行われた。 その後の討議では、深井穫博氏(財団法人8020推進財団地域保健活動推進委員会委員長)による進行のもと、歯科保健条例が制定されることによる地域の歯科保健活動の変化や、住民参加型の歯科保健の手法など、今後の新しい8020運動の展開についてさまざまな意見が出された。また、会場からも地域歯科保健活動に携わる関係者の取組みや地域の課題が出され、終始盛況となっていた。新潟県歯科保健条例について述べる佐藤 徹新潟県歯科医師会常務理事。財団法人海外邦人医療基金ドイツ巡回健康相談を実施小児科と歯科との協働作業で疾病の早期発見を目指す社 会 2009年11月27日(金)から12月7日(月)にかけ、財団法人海外邦人医療基金(秋草直之会長)によるドイツ巡回健康相談が実施された。本事業は、デュッセルドルフ、ミュンヘン、フランクフルトの3都市に在住する邦人小児を対象に、歯科健診を通じて自閉症やADHD(注意欠陥・多動性障害)など、発達障害をもつ児童に専門の小児科医が診断を行うもの。医科から榊原洋一氏(お茶の水女子大学教授)、歯科から田中健一氏(北京天衛診療所)、濱田浩美氏(昭和大学歯学部口腔リハビリテーション科)が派遣された。 歯科の健康相談には6日間で約200名が訪れ、保険の限度額まで治療を行うような過剰診療や、安易な抜歯によるインプラント治療、治療文化の相違などに関する相談が行われた。 本事業に参加した田中氏は、「滞在期間が短く、限られた時間の中で相談を受けなければならない。相談内容は多岐にわたるが、当該者が母国語である日本語で相談できることは、完璧な回答にもまして安心させることができる」と意思疎通の大切さを訴えた。また、「予算も限られているため、参加する人材も豊富ではなく他国や都市までは拡張しにくい。現地の紹介病院など情報面の整備も必要」と今後の課題についても述べた。 日本人が海外で医療を受ける際の問題として、言語や加入保険による医療の制約などの問題が挙げられる。とくに小児期におこる発達障害は、現地の医療機関では適切な医療が受けにくい傾向にあるため、疾病の早期発見が遅れているのが現状のようである。しかし、さまざま課題を抱えつつも発達障害を有する児童への早期診断は急務であり、在外でも歯科相談者は少なくない。このギャップを補完する小児科と歯科の協働作業による本事業の意義は非常に大きいと思われる。歯科保健指導を受けるドイツの邦人児童ら。 2009年12月21日(月)、静岡県は定例県議会において、「静岡県民の歯や口の健康づくり条例」が可決され、同月25日付けで交付された。全国での歯科条例制定は2008年の新潟県、2009年の北海道、同年12月の長崎に次いで4件目となった。 静岡県では、2001年に静岡県歯科医師会(飯嶋 理会長)が事務局となり、他職種からなる“8020健康静岡21推進会議”を設置して県内各地で8020運動を推進している。現在では5,400名の“8020推進員”が活動している。以下に条例の目的および特色を示す。(目的) 第1条 この条例は、歯や口の機能が全身の健康を維持増進するうえで重要な役割を果たしていることにかんがみ、本県の歯や口の健康づくりについての基本理念を定め、及び県の責務等を明らかにするとともに、歯や口の健康づくりに関する施策の基本となる事項を定め、歯や口の健康づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって生涯にわたる県民の健康の増進に寄与することを目的する。条例の特色1)歯や口の健康づくりについて県民の自主的な努力を促し保健医療、公衆衛生、社会福祉等の施策と連携を図り総合的に推進する。2)県の責務、保健・医療・福祉・教育等について関係者及び県民の役割を明確化した。3)住民参加の姿勢を鮮明にして県民会議の設置及び運営を規定した。4)市町との連携協力、情報提供、専門的または技術支援を行うこと。条例に期待すること 歯科医師は人々が生涯を通して咀嚼機能を良好に保つことに対する責務を担っています。歯科疾患が生活弱者に集中して発現することから、口腔弱者を減らすことが地域社会の今日的な課題です。県条例成立は人びとが生活する拠点である市町の条例制定の道程であると位置づけています。同時に会員診療所が診療だけでなく、健康―疾病―健康の地域循環型の地域保健の担い手として機能することが期待されています。 静岡県歯科医師会資料よりSPTについて(その2) 一連の歯周病治療終了後、病状安定となった患者を維持するための治療や管理の重要性は、だれしもが認めるところである。しかし、現行のSPTはいまだにかつてのP継診の算定頻度には遠く及ばない。中医協の調査によると、レセプト2,000枚当たり1回の割合しか算定がない。仮にSPTを算定しなくても定期的に経過観察し、歯周組織検査による再SCや再SRPなどで管理しているならば問題ないだろう。ただし、P継診が廃止されて以降、継続管理が望ましい患者も一様に治癒とみなし、終了とされてしまったならば、患者はたいへん不幸である。 SPT算定が伸びない理由は前号で記したように、SPTを算定できる患者の要件が厳しいことによるのは間違いないが、それだけではない。 その他の理由として、1つ目はSPTの算定後に任意中断があった場合、いったい何か月の任意中断があれば初診料は算定可能となるのか、明言を得られていないことがある。また1年、2年、または3年経過時点でのSPTからの離脱の可否も不明である。 2つ目はSPTの費用が年毎に漸減することである。1年目だろうが3年目だろうが、行う処置内容に変わりはない。歯数による点数の差は容認できたとしても、年数による差は考えがたい。また、4年目以降についてもまったく何も見えていない。もちろん、3年間管理してきた患者に「今日で保険による治療はできません」とは到底いえない。 SPTの定着を願うからこそ、本年4月の点数改定では十分な対応をしていただきたいと念願する。(お茶の水保険診療研究会:Y・S)

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