新聞クイント2010年3月(お試し版)
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2010年3月10日(水) 第171号2今月のニュース今月のニュース 1月22日(金)、歯科医師会館において、日本歯科医師連盟(以下、日歯連盟、堤 直文会長)による定例記者会見が開催された。 冒頭、堤会長は前日21日(木)の日経新聞の夕刊で報道された「民主候補推薦 日歯連が検討」の内容が理事会でも話題となったことを報告したうえで、「候補者を推薦するためには、規約上、選考委員会を立ち上げなければならないため、報道にあるような検討はしていない。民主党からは具体的な話はない」と正確ではない報道に対して憤りをあらわにした。 引き続き髙木幹正理事長は、同日開催された理事会での協議内容について、とくに次期参院選への対応に多くの時間が割かれたとし、「中央(民主党)と地方(自民党)のねじれ現象の対応に苦慮している」と述べた。 その後、記者団からの次期参院選への対応に関する質問があいつぐなか、髙木理事長はきたる2月19日(金)に開催される臨時評議員会の議案に関して、「おそらく次期参院選の対応が議論の中心となるだろう。難しい局面であるため慎重に議論し対応していかねばならない」と述べた。開会の挨拶を行う江藤会長。 1月9日(土)、歯科医師会館において、第26回歯科医学を中心とした総合的な研究を推進する集い(日本歯科医学会主催、江藤一洋会長)が開催された。本集いは、学際的交流を通じ、研究発展のための研究グループ結成のきっかけや、研究に関するアドバイスを受けるための場の提供を目的として毎年開催されている。会場では10題の演題発表、ポスターディスカッションが行われた。 午前の部では、5題の講演が披露されるなか、「吸収性プレートによる顎骨の再生」と題するテーマで小島 拓氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科組織再建口腔外科学分野)が登壇。小島氏は、口腔外科領域の広範囲の顎骨欠損症例に対して、骨再生誘導法(GBR法)で使用する膜の強度不足を指摘。強度ならびに形態付与の特性を生かした熱可塑性吸収性プレートを応用した顎骨再生の結果を示した。今後、さらなるプレートの開発や骨補填材の開発も視野にいれた研究が進められていくとのこと。 午後の部では、残り5題の講演が披露されるなか、「ポリエステル共重合体の義歯用材料への応用」と題するテーマで佐藤雅之氏(東京医科歯科大学大学院部分床義歯補綴学分野)が登壇。佐藤氏は、ノンクラスプデンチャーに用いられているポリエステル共重合体について、歯科企業と共同研究の結果を披露した。高齢社会にともなう義歯の需要の高まりから、より強度で柔軟性にすぐれた材料の開発の必要性がうかがえた。 今回の発表では、歯周組織や顎骨、歯髄細胞といった再生医療の分野の研究テーマが多く見受けられた。研究発表者からは、今回の研究発表をさらに進展させるべく歯科分野のみならず医科、心理学、経営学など幅広い分野への協力を希望する声が出された。日歯連盟、定例会見を開催次期参院選の民主党への対応に関する質問あいつぐ第26回歯科医学を中心とした総合的な研究を推進する集い開催政 治社 会 会見で挨拶する堤会長。野宿生活者に対する歯科保健活動に取り組む中久木康一新宿連絡会医療班、歯科医師「歯科医療を通して野宿生活者の自立支援をサポートしたい」 野宿生活者の歯科保健の支援活動を10年以上続けている中久木康一氏。支援活動といえば、年越し派遣村のように食料や就労が注目されがちだが、氏は歯科医療を希望する野宿生活者に歯科の知識や情報を提供することで受診を促し、自立を支援している。現在では、歯科医療を通じて社会貢献する同様の活動が大阪や福岡においても開始されており、全国規模のネットワークも形成されつつある。本欄では、氏の活動の現状と課題についてうかがう。中久木:私の所属する新宿連絡会医療班では、現在毎月第2日曜日に医療相談会を行っています。野宿生活者に対する「炊き出し」に合わせて、ボランティアで参加している医療者が血圧測定や健康相談などを行い、私は1998年末から参加しています。 現在、私は歯科相談後に治療の必要な野宿生活者には福祉事務所での手続きを勧めたり、紹介状を作成して受診を促しています。歯科における野宿生活者の歯の関心は、衣食住の基本的な生活が安定しないこともあり、残念ながら非常に低いです。 そのため、う蝕や歯周病に罹患している割合が高く、野宿生活者の多くは多数歯欠損による咀嚼障害など、歯科医療を必要としています。しかし現実は、多くの疾患を抱え歯科医療が必要にもかかわらず、制度や行政サービスを受けることができない野宿生活者の現状があります。そのような状況を積極的に発信しつづけてきた結果、現在では福祉事務所でも歯科の重要性を理解していただき、また歯科医療機関や歯科衛生士、ケースワーカーのご協力もあり、多くの野宿生活者が歯科を受診できるようになりました。 私は本活動を通して、野宿生活者が歯科相談を入口として福祉行政サービスを受けることができ、歯科治療を受けたことで結果的に自立につながった貴重な体験をしました。しかし、これは私の力ではなく、「歯科医療で社会に貢献したい」という地域の歯科医療従事者の協力があってこその支援活動であると感謝しています。 地域医療という単位でみれば、屋外に歯科器材を運び、疾患をその場で治【プロフィール】1998年、東京医科歯科大学歯学部卒業。2002年、同大学院修了。病院勤務、病院形成外科研修を経て、2006年から東京医科歯科大学歯学部附属病院医員。2009年、同大学医歯学総合研究科顎顔面外科学助教。新宿連絡会における野宿生活者への支援の他、在日外国人など「医療におけるマイノリティ」への支援をボランティアで行っている。療しさえすれば本人は満足するかもしれませんが、予防の概念がなければ同じ疾患を繰り返すことになり、根本的な解決にはなりません。現在のような医療相談が必要なくなることが理想ですが、そのためには野宿生活者に対して福祉事務所での手続きを勧めるだけでなく、う蝕や歯周病のような予防可能な疾患を含めたセルフケアの知識および情報提供が必要であると思っています。 私は、歯科の分野をもう少し広域に捉えることで健康福祉医療従事者の一員としての役割も果たせると思っています。今後も歯科医療を通して野宿生活者の自立支援をサポートしたいと考えています。www.tokyohomeless.com/各28,000円(税抜)1セット3本入り18,000円(税抜)歯科の初・再診料引き上げへ……歯科の初・再診料引き上げへ…… 絵 山香和信 絵 山香和信

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