新聞クイント2012年3月(お試し版)
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2012年3月10日(土) 第195号2 引き続き、中医協委員である堀憲郎常務理事は、今回の改定で据え置きになった初・再診料について、「歯科は単科で小規模経営であるといった特殊性が、医科を中心とした財源の重点配分や病院勤務医の負担軽減など大きな議論の中で、なかなか議論にならなかった」と述べた。一方で、歯の保存に関する基本的な技術が見直されたことに対しては、一定の評価を示した。 また、今回の改定における重点課題として①周術期における口腔機能の管理等、チーム医療の推進②在宅歯科医療の推進――といった歯科の方向性は示されたが、周術期の口腔機能管理などについては医療連携を含めた体制整備の必要性を挙げ、在宅歯科医療については十分に取り組みが推進されているわけではないことを指摘した。 さらに、「今回は重点項目に重きが置かれた改定であったため、一般歯科診療所にとってはあまりかかわりのない改定になったのではないかと懸念される会員もいるだろう」と述べた。日歯の試算によると、周術期における口腔機能の管理や在宅歯科医療の推進など、重点項目に対する歯科財源の割合は15%ほどとのこと。 今月のニュース月22日付で独立行政法人国民生活センターが発表した「歯科インプラント治療に係る問題―身体的トラブルを中心に―」の調査・分析について言及した。同センターは今回の結果を踏まえ、同日付で患者さんへ十分な情報提供、治療に関するガイドラインの策定などを記載した要望書を日歯に提出している。そのうえで、大久保会長は「インプラント治療にともなう技術の向上や担保、研修の主体は専門学会となるが、患者さんの苦情やトラブルを含めた処理に関しては、都道府県・郡市区歯科医師会と連携しながら対応していきた 1月26日(木)、歯科医師会館において、日本歯科医師会(以下、日歯、大久保満男会長)による定例記者会見が開催された。 冒頭の挨拶で大久保会長は、さる12い」と述べた。 また、中島信也常務理事は同センターからの要望を受け、さる1月12日付で回答したことを報告。日歯としては、都道府県歯科医師会などの医療相談窓口や各都道府県などが運営する医療安全支援センターなどとの連携を強化し、患者さんにインプラント治療に対する誤解や不安を生じさせない体制整備を図るとした。 なお、一般からの問い合わせに関しては、医療管理課が対応するとのこと。 今月のニュース中医協、平成24年度診療報酬改定を答申日歯臨時会見日本に予防歯科を浸透させた臨床家熊谷 崇医療法人社団日吉歯科診療所理事長メインテナンスを通して「健康な歯」の価値を上げることが責務 2011年末をもって対外的な講演活動を終了した歯科医師・熊谷 崇氏。1,500名以上を集めた会場では、“熊谷節”の終了を惜しむ声も聞かれたが、熊谷氏が40年にわたる歯科医師人生において歯科界に伝えたかったことは「患者さんにより良い歯科医療とは?」であった。日本に予防歯科がもっと浸透すれば、熊谷氏が語るように歯科の未来はけっして暗くないといえよう。熊谷:日本の歯科は、斜陽産業と言われて長い時間がたちました。近年では私立歯科大学・歯学部の定員割れや、歯科医師のワーキングプアなどが報道される要因として、歯科医師過剰問題が多々挙げられていますが、これは本質的に間違っていると考えています。 2011年にWHOが出したデータによると、米国や北欧の歯科先進国は、人口1万人あたりの歯科医師数が日本よりも多く、それでもまだ不足を補うための政策を実施しています。これらの国では、歯科医師はなりたい職業の上位につねに挙げられ、歯学部に入るには25倍以上の競争を勝ち抜かなくてはなりません。したがって、日本の歯科の閉塞感は、歯科医師過剰でなく国民の「健康な歯」に対する価値観が低いことが原因といえます。 たとえば初診患者の口腔内を見ると、若いときから安価で質の低い保険治療により多くの歯が治療され、60歳を過ぎた患者さんの多くは歯を失っていますが、そのことにほとんどの人が疑問をもっていません。ですから、私は歯科医師の責務として、これまでメインテナンスを通して「健康な歯」の価値を上げることに取り組んできました。たとえばリスクアセスメントに基づくメインテナンスや歯科治療、それを提供するための設備やスタッフ教育、何よりも患者さんには徹底的に情報を公開してきました。 その結果、長期メインテナンスに来院される患者さんは高齢になっても多くの歯が残り、「健康な歯」に対する価値観が高くなっています。そして、破折などで補綴物が必要となった患者さんには、質の高い補綴物やインプラントといった高度歯科医療を提供しています。しかし、当地域では米国や北くまがい・たかし1968年、日本大学歯学部卒業。1971年、神奈川県横浜市港北区にて開業。1980年、山形県酒田市日吉町にて移転開業。1999年、マルメ大学歯学部(スウェーデン)名誉博士号取得。2006年、日本大学客員教授。現在、新潟大学歯学部、東北大学歯学部、九州大学歯学部、鶴見大学歯学部の非常勤講師を務める。欧の歯科先進国のような一般歯科医と補綴、歯周、歯内、小児、矯正、口腔外科の専門医によるネットワークが形成されていません。そのため、自院を米国専門医(補綴・歯周)を含めた各専門医と一般歯科医とが揃ったセンターに成長させてきました。付帯的に「歯科医療」の価値も高まり、最近では来院される患者さんの中から歯科医師、歯科衛生士を目指す若者が増えています。 昨年末をもって対外的な活動は終了しましたが、より魅力的な歯科界とするために、意識の高い歯科医院、若い歯科医師、歯科衛生士については、今後も当院でのオーラルフィジシャン育成セミナーなどを通じて全面的に支援して行く予定です。改定結果について説明する堀常務理事。日歯の対応について説明する中島常務理事。インプラント治療トラブルへの対応で窓口を一本化日歯定例会見政 治政 治 2月10日(金)、中央社会医療保険協議会(以下、中医協、森田 朗会長)は、平成24年度診療報酬改定において、小宮山洋子厚生労働大臣に改正案を答申した。その答申発表を受けて同日、日本歯科医師会(以下、日歯、大久保満男会長)による臨時記者会見が開催された。 冒頭の挨拶の中で大久保会長は、会長就任時からの改案について振り返りながら、今回厳しい財政状況の中でつぎにつながるプラス改定となったことについて、「日々の診療の中に生かされる改定であってほしい」と述べた。インプラントトラブル急増の解決策は…… 絵 山香和信●隔月刊誌:奇数月10日発刊 ●サイズ:A4判変型 ●定価:4,830円(本体4,600円)●年間購読料:定価28,980円(本体27,600円・税5%)お問い合わせ・ご購入は03-5842-2272または歯学書ドットコムまで!■ 緊急企画「インプラント患者の不安を解消しよう! 1分で作成できるデジタル診断書類の活用法」 皆川 仁■ 特別企画「インプラント迷入はなぜ起こるのか? ―知っておくべき予防法と対処法―」松浦正朗●私のインプラント履歴書 榎本紘昭● インプラント審美 ◆「上顎多数歯の抜歯後即時埋入症例―Symmetry & Balance、理想的な軟組織形態を目指して―」飯田吉郎● インプラント卒前・卒後教育の現場から ◆「明海大学歯学部」森 一将、嶋田 淳● 連載 ◆「インプラント外科器具・器材の使い方 完全マスタープログラム」嶋田 淳 ◆「インプラントの重大事故を起こさないために」下尾嘉昭インプラントを臨床に生かすための専門誌2号

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