新聞クイント2012年11月(お試し版)
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2012年11月10日(土) 第203号3保険の窓 今月のニュース クインテッセンス出版株式会社(東京都、佐々木一高代表取締役)は2011年4月、わが国においてすぐれた臨床・研究を行っている歯科医療者を支援し、日本全国および全世界に発信する試みとして「クインテッセンス論文奨励賞」を設立した。 昨年に引き続き、募集が行われた第2回クインテッセンス論文奨励賞は、さる9月27日(木)に開催された選考委員会における厳正なる審査の結果、基礎部門の優秀論文賞に安田大勲氏(大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座歯科補綴学第二教室、兵庫県開業)の「下顎臼歯部カンチレバーに関する生体力学的リスクファクター:3次元有限要素モデルと多変量解析による検討」が選出された。また、臨床部門の優秀論文賞に宗像源博氏(東京医科歯科大学歯学部附属病院インプラント外来)の「ポリ乳酸デバイスをスペースメイキングに用いた骨移植材を併用しない上顎洞底挙上術の臨床学的検討」が選出された。 これら受賞論文は、『別冊 the Quintessence YEAR BOOK 2013』(小社刊)およびQuintessence Publishing Co, Inc.発行の海外英文雑誌のいずれかに掲載予定である。 同賞の授与式は、きたる11月24日(土)、パシフィコ横浜(神奈川県)において開催される第2回インプラント・CAD/CAMミーティングにおいて行われる。 なお、第3回クインテッセンス論文奨励賞については、詳細が決まり次第、後日弊社ホームページまたは各雑誌にて報告されるとのこと。 今月のニュース 今月のニュース訪問診療について(その1) 2か月ほど前、友人の内科医から「在宅で管理している患者さん(89歳女性)が入れ歯を作りたいと言っているので診てやってくれないか」と依頼を受け、訪問診療を行った。 上顎1歯、下顎7歯の残存歯とそれ以外に上下に8本の残根状態の歯があり、上下の歯で咬合関係はなく20年以上義歯装着はない。5回の訪問診療でとりあえず上顎に13歯欠損の残根上義歯を装着し、咬合もできるようになった。患者さんは鏡を見ると若くなったと大喜び。その後、バナナを食べ、つぎはクッキーだといって大はしゃぎ。次回訪問すると食事もよくできると感謝感謝である。 ところが、2週間後再び訪問すると食欲も旺盛で何でもよく食べるのだが血圧が上がったとのこと。食欲増進と血圧上昇の因果関係について、にわかには合点がいかないので診療所に戻ってすぐ主治医の友人に電話したところ、患者さんは元々農家で長年厳しい農作業を続けてきたことから食事の味付けが濃くなり、そこにきて食事量が増えたことから摂取食塩量の増加による血圧上昇であろうとのことであった。風が吹けば桶屋が儲かる式の話であり、得心した。 さて、この期間の患者家族と筆者のやり取りを以下に記す。患者家族:「治療費はこんなにお安くてよいのですか」筆者:「(よくはないが)これだけしかいただけないのです。今にも折れそうな歯があるので、折れたらまた入れ歯は作り替えになります」患者家族:「こんなにお安いのでしたら何度でも作ってください!」筆者:「……(ガクッ)」 疲れてなお不採算な訪問診療である。 (お茶の水保険診療研究会:Y・S)第2回クインテッセンス論文奨励賞、受賞者が決定基礎部門の優秀論文賞を受賞した安田氏(左)と、臨床部門の優秀論文賞を受賞した宗像氏。 歯科技工士有志による「東日本大震災復興支援チャリティ講演会」(実行委員代表:山本 眞氏)は、福岡(1月)、名古屋(3月)、大阪(7月)、東京(9月)の4都市で開催した講演会ならびに実習会で集まった総収益金が、概算で約2,800万円となることが小紙の調べでわかった。収益金はすべて復興支援に役立てられる。 さる9月17日(月)に開催された東京会場では、海外で活躍する歯科技工士のWilli Geller氏(oral design)や遠藤淳吾氏(フリー)、日本を代表する歯科技工士の青嶋 仁氏(ペルーラAOSHIMA)、湯淺直人氏(大谷歯科クリニック)、山本 眞氏(M.YAMAMOTO CERAMIST'S INC.顧問)が講演を行い、歯科技工士を中心に約400名が参集した会場は大盛況となった。 冒頭の挨拶で登壇した山本氏は、今回のチャリティ講演会を開催するにあたった趣旨について、時おり言葉を詰まらせながら述べ、歯科技工士を中心とする実行委員や歯科医療関係者の多大なる協力によって本講演会がここまで継続して開催できたことについて感謝の意を示した。 講演会終了後、山本氏は小紙の取材に対して「今回の活動をとおして多くの同士が力を合わせることで何かできることが証明できたので、震災を風化させないために、1~2年後をめどにぜひ東北地域でチャリティ講演会を開催したい」と意気込みを語った。 なお、全会場の収支報告書はホームページ上ですべて公開される。URL:http://applause-j.com/311/charity.html総収益金2,800万円、被災地支援へ歯科技工士有志による東日本大震災復興支援チャリティ講演会東京会場終了後の集合写真。政 治チャリティ学 術 9月27日(木)、歯科医師会館において、日本歯科医師会(以下、日歯、大久保満男会長)による定例記者会見が開催された。 大久保会長による挨拶後、山科 透副会長(日本歯科総合研究機構長)より、2009年に世界的に流行した新型インフルエンザをきっかけに、日本歯科総合研究機構の研究助成事業として口腔内細菌とインフルエンザウイルスの関係性について研究・調査を行うプロジェクトチームが設置され、清水一史氏(日本大学医学部感染症ゲノム研究センター)や花田信弘氏(鶴見大学歯学部教授)らを中心とする研究チームの研究成果が科学雑誌『PLoS ONE』(Public Library of Science社)に掲載されたことが報告された。 冨山雅史常務理事より、10月半ばに厚生労働省に提出を予定している「薬事承認に関する要望」について報告がなされた。本要望書には、先般政府が発表した「日本再生戦略」「医療イノベーション5カ年戦略」の中に歯科医療分野を取り込むためのイノベーション推進支援として、新規技術開発の財政的補助や薬事承認費用の減免などが盛り込まれている。また、個人輸入問題への対応について言及し、「日本において販売されているにもかかわらず、コスト削減のためにインターネットを利用して未承認品を購入している。今後重大な医療事故が起きる前に日歯として対応したい」と述べ、厚労省と日歯を含めた関連団体との意見交換を要望しているとした。 インプラントトラブルが問題視されるなか、歯科界が取り組むべき喫緊の課題として早急な対応が望まれる。薬事承認に関する要望書提出へ日歯定例会見『PLoS ONE』に掲載された論文について説明する山科 透副会長。

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