新聞クイント2018年5月(お試し版)
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2018年5月10日(木) 第269号2 今月のニュース政 治日本顎咬合学会の「顔」上田秀朗(特非)日本顎咬合学会理事長 3月29日(木)、神奈川県歯科保健総合センター(神奈川県)において、神奈川県歯科医師会(鈴木駿介会長)と神奈川県歯科衛生士会(鈴木幸江会長)による調印式「包括連携に関する基本協定書並びに災害時の歯科医療救護活動に関する協定書」と記者発表「神奈川県歯及び口腔の健康づくり推進条例改正」が開催された。 会場では、松井克之氏より「包括連携に関する基本協定」、土屋松美氏(ともに神奈川県歯科医師会副会長)より「災害時の歯科医療救護活動に関する協定」の経緯説明が行われたあと、調印式が行われた。今回の包括連携協定によって、マンパワーの確保や両組織が開催する事業内容の拡大、入会促進の後押しなどにつなげる。また、災害時の歯科医療活動に関する協定では、大規模災害発生時に地域住民への歯科保健医療活動を遅滞なく行うための相互連携を強化することで、適切な対応を目指す考え。 鈴木駿介会長は、安心・安全な歯科医療を提供する組織として連携・協力する重要性を強調し、「これまで以上に組織としての連携を緊密にし、県民の健康の維持・増進のために努めていきたい」と述べた。 その後、鴨志田義功氏(神奈川県歯科医師会副会長)より「神奈川県歯及び口腔の健康づくり推進条例改正」の発表と事業紹介が行われ、オーラルフレイル対策普及啓発映像(神奈川県健康増進課制作)と、テレビCM(神奈川県歯科医師会制作)の映像も紹介された。 歯科保健条例の基本的施策にオーラルフレイル対策という文言が明記されたのは神奈川県が全国初となる。本条例改正によって、歯科保健事業のさらなる推進が期待される。事業拡大と組織力強化を目指し、連携協定を締結神奈川県歯科医師会・神奈川県歯科衛生士会調印式で握手を交わす鈴木幸江氏(左)と鈴木駿介氏。「真・顎咬合学」で国民の健口長寿と歯科界の発展を目指す 歯科臨床系の学会として最大規模の会員数を擁する日本顎咬合学会の第14代理事長に就任した上田秀朗氏(福岡県開業)。健康長寿の延伸に寄与する歯科医療が周知されつつある昨今、氏はどのような会務運営を目指すのか。上田:2012年に提唱された「新・顎咬合学」は渡辺隆史元理事長が種をまかれ、上濱 正前理事長のもとで結実いたしました。この5年間に、日本顎咬合学会の活動はさまざまなメディアに取り上げられ、文字どおり歯科界の牽引役となって、情報発信を行ってきました。 「生涯にわたり噛んで食べることが健康長寿の基本」への国民の知識と理解は確実に深まったといえますが、オーラルフレイルをはじめ、「全身と口腔機能のかかわり」に関しては、依然として取り組まなければならない問題が山積しています。これらを改善するためには、医療と介護の領域だけでなくさまざまな業種との連携が必要であると考えます。 そこで「新・顎咬合学」を継承し、過去5年間の活動をさらに発展させるものとして、新たな5か年計画に「真・顎咬合学」を制定いたしました。会員には顎咬合学の「真髄」を理解し、臨床で応用していただきます。そして国民、患者さんに顎咬合学の「真心」を伝え、本学会の「真髄」を評価していただけるようにしていきたいと思います。 これらのことを実現するためには、会員による「国民の健康な咬合」の育成・維持・再建・管理の実践が不可欠であり、国民の要望と期待に応えることのできる会員歯科医師を育成することが必要です。また、本会の若手歯科医療専門職には人間としてはもとより、歯科医療のプロフェッショナルとして、次世代の歯科界を牽引してもらいたいと思います。そのために次世代の若手に魅力ある将来像を提示し、それを達成するための教育研修体制の構築を目指しています。 現在、歯科界は、基礎と臨床、開業歯科医師と大学との連携、医科との連携、スタディグループ同士の交流が活うえだ・ひであき1983年、福岡歯科大学卒業。1987年、北九州市小倉南区にてうえだ歯科開院。2007年、北九州市小倉北区に移転。2010年、福岡歯科大学臨床教授。2014年、南カリフォルニア大学歯学部客員教授。2017年7月より現職。発に行われるようになっています。歯科界を取り巻く全員が、協力して歯科界を良くしていこうという雰囲気ができてきているのではないでしょうか。立場は異なりますが、全体が同じ方向を目指し、協動して盛り上げ明るい未来を目指していくことは、本学会にしかできないことだと考えます。さらに歯科界にとどまらず、医科との連携、監督官庁との連携、メディアへの情報提供など、異業種との連携もますます重要になってきており、会員一人ひとりの担う役割も大きくなってきています。 本学会を支える会員すべてが恩恵を享受でき、会員であることに誇りがもてるよう、本部と支部の連携充実・強化を図り、「真・顎咬合学」で国民の“健口長寿”と歯科界の発展を目指したいと思います。娘:「お母さん! お母さんのレシピ通り、出汁をとってみたっちゃけど。味見して」母:「うすい……」娘:「お母さんの味は、再現できんわぁ~」 月1回、言語聴覚士の筆者が訪問している利用者(80代)とその娘(60代)の会話である。日常に溢れている親子の何気ない会話であるが、この方は、複数回の脳梗塞と誤嚥性肺炎によって栄養手段が胃ろうとなり、胃ろう造設後に本人から「食べたい」との意思表出があった。嚥下訓練を実施するにあたり、家族をはじめ、主治医、施設職員、ケアマネジャー、訪問スタッフ(看護師、理学療法士)と話し合い、家族の「食事の用意や介助をしたい」との希望によって、家族指導を中心とした介入となった。 訪問リハビリテーション事業所や訪問看護ステーションに所属している言語聴覚士が少ない地域のため、言語聴覚士のサポートを必要としている利用者へ十分に訪問を行うことができないのが現状である。しかし、訪問回数が少ないなかでも、上述したような家族指導を中心にかかわることで、食べることへの支援ができるのではないかと感じている。 昨年9月、筆者は甘いものが苦手な利用者に対して、宮崎特産品のある果実を使って即席ジュースを作った。その果実をひと絞りし、はちみつを混ぜた即席ジュース、その名も「はちみつ へべす※」。もちろん、とろみ付きである。利用者:「香りがいい、うまい。ばあさんに作り方、教えちょけ!」 利用者の反応は上々であり、地元ならではの食べものや旬の食材、季節を感じさせる工夫もまた、食べることへの支援の1つだと感じている。これからも地域に寄り添う言語聴覚士でありたい。(児玉睦代 言語聴覚士・訪問看護ステーションやわらぎ)食べる 楽しむ、家族とともに。リレー連載④「食べる」を支える―私の視点―地域に寄り添う仕事※宮崎県日向市特産の柑橘。カボスとスダチの中間ほどの大きさで、香りが良く地元では古くから料理に用いられている。

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