新聞クイント2018年6月(お試し版)
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2018年6月10日(日) 第270号2 今月のニュース政 治歯科用レセコンのクラウド化を目指す岩室圭一デンタルシステムズ㈱代表取締役 4月26日(木)、歯科医師会館において、日本歯科医師会(以下、日歯、堀 憲郎会長)による定例記者会見が開催された。 冒頭の挨拶の中で堀会長は、会長就任時から掲げている28課題について言及。現執行部ではその課題を再整理して取り組み、本年度は16項目の課題のスリム化を図り、ボードおよびタスクチームで対応していく考えを示した。その中で新たに設置したボードとして「オーラルフレイルの対応」、タスクチームでは特に「歯科活性化会議」、「歯科の新病名」の2つを含めて重点項目として取り組んでいくとした。 その後、佐藤 保副会長は2017年11月に国際誌『ジャーナル・オブ・ジェロントロジー』に、飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授)らのオーラルフレイルと死亡リスクに関する論文が発表されたことを紹介。日歯としてオーラルフレイルに関するさまざまな意見をいただくなかで、大きな論点であった「スクリーニングする機能の有無」を挙げ、今回の論文によってオーラルフレイルの要因が生命予後にどうかかわるかという根拠が明確に示されたことを高く評価するとともに、「今後のオーラルフレイル対策を普及・推進させたい」と述べた。 その後、小玉 剛常務理事より、このたび日歯が作成したパンフレット「平成30年度介護報酬改定のポイント」について介護保険の理解の促進を図るために、介護サービスの利用の手続きや口腔関連サービスがまとめられた内容などが説明された。 その他では、日歯会員の年代別構成表が資料として示され、平成30年3月31日現在で会員数64,540名、平均年齢59歳11ヶ月となった。オーラルフレイル対応ボードを新たに設置日歯定例会見本年度はきたる11月に8020運動30周年記念事業が行われる予定である。クラウド化を普及させて歯科界に貢献したい 歯科界においてもIT化の動きはめまぐるしく進化しているなか、IT環境をネットワーク経由でクライアントPCを管理する方法として、「シンクライアント」と呼ばれる技術が注目を集めている。本欄では、その技術を活用して歯科用レセプトコンピュータシステム(歯科用レセコン)のクラウド化を目指すデンタルシステムズ株式会社(東京都、岩室圭一代表取締役)にその目的と可能性についてうかがった。岩室:弊社は歯科用レセプトコンピュータシステムの開発・販売・サポート業務を行う企業として2000年6月に設立し、より付加価値の高い商品を提供するために、日々企業活動に取り組んでいます。そのようななか、歯科用レセコンをクラウド型のパッケージ化するための高度な技術「シンクライアント」を有するICT企業を2018年1月に買収しました。2019年には弊社の主力製品「POWER4G」を、そのシンクライアント技術を使ったクラウドシステムとして提供する予定で開発を進めています。 私がクラウド化にこだわる理由として、まずはデータの保全です。歯科医院では患者さんの医療情報を取り扱いますので、高い機密性が求められることはいうまでもありません。そのためクラウド型「POWER4G」には、医療情報システムに必要不可欠な「真正性」「見読性」「保存性」の3つを盛り込んでいます。医療情報のクラウド化はますます注目されていくと思っています。 つぎに、一般的な歯科用レセコンの特長として、リース満了やハードウエアのサポート終了によって買い替えが発生する現状があります。他社製品に乗り換えようとする場合、買い替えの際に莫大なコストがかかるだけでなく、処理データ移行という大きな障壁があります。この歯科界特有のビジネスモデルは、小規模歯科医院が大多数を占めている歯科界において、医院経営に大きな影響与えることだけでなく、医療情報のクラウド化を普及させる足かせにもなっているといって過言ではないでしょう。 今回のクラウドシステムのように、いわむろ・けいいち2000年、デンタルシステムズ株式会社を設立し、代表取締役に就任。主力製品である歯科用レセコン「POWER4G」のシステム開発に携わる。2019年、シンクライアント技術を使ったクラウドシステム「POWER4G」をリリース予定。より良いモノを適切な価格で提供することで、歯科医院の根幹をなす重要なカルテ・レセプト業務や多岐にわたるデータの管理運用に関する負担を軽減させることが可能です。 歯科界ではどの企業もまだなしえていない歯科用レセコンの真のクラウド化を普及させることで弊社の技術力をアピールしたいと思っています。近い将来、IoTですべてのモノがインターネットでつながる時代が到来しますので、クラウド化を普及させることがひいては歯科界の活性化の一助となると自負しています。 2020年に弊社は設立20周年を迎えます。経営者としてつねに新しいことにチャレンジする姿勢をもち続け、ユーザーの皆様はもとより社員に対しても夢を与えられる企業でありたいと考えています。 幼少の頃を過ごしたのは今風にいうと古民家で、かまどでご飯を炊いていました。私は母のそばをちょこまかと動き回り、かまどの炭を炭ツボに入れたり、庭で飼っていたウサギのエサのキャベツを切ったりしていました。食が細かった私のおやつ代わりにと、母が釜の底のご飯にお茶をかけ、お塩を入れて釜のはらいをお茶碗に入れてくれました。これが私の「思い出の味」です。その味とともに、かまどのホッとする香り、土間の台所や父が作ったというタイル張りのお風呂、裏庭、ドラム缶……さまざまな懐かしい景色がよみがえります! 1970年頃から、大量生産・大量消費社会の浸透を目の当たりにし、インスタント食品に始まり、次々に出てくる新たな味は「思い出の味」を吹っ飛ばし、改築で近代化した台所は簡単・便利・快適になり、懐かしい香りや景色を消し去っていきました。 しかし結婚・出産後、核家族で共働きの慌ただしく孤立した子育ての中で、「食べる」ことの文化的な側面が失われていくことへの危機感に併せて「思い出の味」を懐かしむようになりました。そんな想いから子育て仲間との自主活動として、かまどのある施設で薪を割り、火を扱い、自分たちでご飯を作る楽しさ、美味しさを感じる機会を意識してつくってきました。 その子どもたちがまもなく社会人になろうとしている今、拍車をかけ消費のための食品が出回り、家庭の味をゆっくり味わう習慣も薄れています。今にも途切れそうな日本の食文化を次世代に「繋ぐ」ことの重要性を痛感しています。 だからこそ「思い出の味」から昔話に花を咲かせたり、食べることの豊かさや懐かしい香り、風景を思い出してもらったり、今、育ちの中での「思い出の味」づくりのお手伝いをしていきたいと考えています。(赤井綾美 日本歯科衛生士会認定歯科衛生士〔地域歯科保健分野〕、修士〔社会学〕)あなたの思い出の味はどんな味ですか?リレー連載⑤「食べる」を支える―私の視点―思い出の味

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