新聞クイント2018年7月(お試し版)
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2018年7月10日(火) 第271号2 今月のニュース学 会創業70周年を迎えたYDMの「顔」山浦元裕株式会社YDM代表取締役 5月23日(水)、東京歯科大学(東京都)において、認知症患者に対する義歯診療ガイドライン作成のための最終パネル会議(一般社団法人日本老年歯科医学会主催、櫻井 薫理事長)が開催された。本パネル会議は、一般的に診療ガイドラインは、その疾患の専門家主体により作成されることが多く、専門家の視点に偏りがちであり、本当に患者に利益をもたらすか、あるいはどのような問題点があるのかを拾い上げるために、患者や家族、介護をされている方々より率直な意見を聞き、最終的なガイドライン作成の重要な資料とするもの。パネリストとして義歯の患者、認知症患者の家族、介護士らをはじめ、作成者側として櫻井理事長(東京歯科大学教授)、ガイドライン委員会(市川哲雄委員長、徳島大学教授)の委員らが参加した。 櫻井理事長の開会挨拶のあと、10題の診療ガイドラインが協議された。たとえば「認知症患者において、義歯の使用が可能かどうかを判断する要因は何か?」に対する推奨文(案)は「認知症患者で意思の疎通が難しい場合には、義歯を使用する利点とリスクを考慮し、義歯の使用を総合的に判断する必要がある」となっており、これに対してパネリストらから「そもそも歯科医院でその患者が認知症だとどのように判断するのか?またできるのか?」などの意見や経験談などが出され、たいへん活発な協議が行われた。 平野浩彦氏(東京都健康長寿医療センター研究所)による閉会の挨拶では、「歯科の視点だけではなく、多職種の方々の意見も取り入れてガイドラインを作成していかなければならない」と締めくくった。今回の会議の内容をふまえ、今後学会よりガイドラインが公表されるとのこと。 ガイドライン作成を目指しパネル会議を開催(一社)日本老年歯科医学会開会の挨拶を行う櫻井 薫氏。世界中の人々に、医療事業を通して安心を届けたい 株式会社YDMが本年3月で創業70周年を迎えた。1955年 、日本初の特殊ステンレス鋼を使用したデンタルインスツルメントの販売を開始して以降、YDM製品は日々の臨床現場に必要不可欠な存在となっている。本欄では、山浦元裕氏(同社代表取締役)に70年の歴史を振り返っていただくとともに、YDMが目指すビジョンについてうかがった。山浦:弊社は「先生の良きパートナー」をスローガンに、歯科用器械・器具メーカーとして愛されて続け、おかげさまでこのたび創業70年を迎えることができました。これもひとえに歯科医療従事者はもとより関係者の皆様のご協力・ご支援の賜物と感謝申し上げます。創業当時の歯科界は、海外から入ってくるものは情報だけでなく製品もそうでした。そのような状況のなかで、技術スタッフたちのモノづくりへのこだわりが評価され続けてきた結果、弊社製品は医科用の1,000品目を含め、約4,000品目が臨床現場で使用されています。その中でも歯科用インスツルメントは、現在でこそ歯科の6割のシェアを占めるほどの主力製品となりましたが、YDMブランドを支えてきた根底には、日本の職人技としての技術力があります。とはいえ、いくら技術力があったとしても、市場のニーズを把握せずに製品開発を行ったとしたならば、お客様の評価はいただけないでしょう。ですから、弊社ではしっかり市場のニーズを見極めたうえで開発を行い、高い技術力によって製品化し、その品質を維持する品質管理に徹底的にこだわりながら、歯科医療の進歩を確実にサポートするために取り組んでまいりました。 弊社のモノづくりを支えている、市場を見極める「開発力」と、お客様の声をカタチにする完璧な「技術力」、そして安定供給できる「品質管理力」の3つの力によって、現在では“医療用鋼製小物といえばYDM”という評価までいただくことができ、たいへんうれしく思っています。 私は2009年より父の跡を継ぎ、3代目として現職に就いていますが、これまで創業者らが築き上げてきたやまうら・もとひろ株式会社YDM代表取締役。大学卒業後、歯科関連企業勤務、海外留学を経て、1997年、株式会社YDM入社。2009年より現職。YDMの歴史をさらに重ねる企業として発展・成長していくためには、次世代の医療現場を担うお客様のニーズに柔軟かつ的確に対応できるような新しいアイデアや、固定観念にとらわれない製品開発が必要だと思っています。 また、グローバル時代において、日本市場のみならず世界市場にもこれまで以上に目を向けていくことが重要であると思っています。弊社の技術力は世界でも十分勝負できると確信していますので、YDMブランドをもっと世界にアピールしたいと考えています。 今後も皆様からのご支援にさらに応えられるよう、また環境への取り組みや医療ボランティアなどでも協力できるよう、医療事業を通してYDMブランドという安心を届け、世界の人々の生活と文化に貢献してまいります。 地域で食べる楽しみをどう支えていくかを考えた時、「それが町づくりになる」と有志が集まり、2010年に発足した会が「京滋摂食・嚥下を考える会」(荒金英樹代表)である。 滋賀では、近江商人の心得「売り手よし、買い手よし、世間よし」が引き継がれ、医療・介護の現場では、地域包括ケア版三方よし「住民よし、機関よし、地域よし」として活用されている。機関(病院や介護施設など)における食べる取り組みはずいぶんと進んだが、在宅まで行き渡ったかというと、まだまだ十分ではないだろう。そこで、考える会の滋賀の世話人たちはチームを組み、県内で実技セミナーを始めた。 医師、歯科医師、看護師、理学療法士、言語聴覚士、管理栄養士、歯科衛生士が主なメンバーになり、栄養評価や嚥下評価、ポジショニングと食事介助、口腔ケアなど、ブースごとに実技を行う。バージョンアップすると、介護支援専門員・薬剤師・医療ソーシャルワーカー(MSW)が加わりケアプランもかじるので、受講者は文字通りお腹いっぱいのセミナーを体験する。専門職だけでなく、住民に届けたい。そんな思いから、今年7月の大会では「家にあるものでつくる嚥下食」の調理実習を行う。食べられる口をつくる口腔ケア、食べる姿勢をつくり正しい食事介助とともに学ぶ。 私はこの活動を始めて、人・時間・地域をさまざまな角度で考えるようになり、歯科衛生士の仕事がより楽しくなった。食べることを支えるために歯科が期待され、私たちのやりがいが増していると感じる。もちろん、うまくいくことばかりではない。多職種が交わり活動の場を広げると、意見の対立もある。泣いたり笑ったり、自分のQOLを高めながら、町づくりにつながる食支援を続けていこうと思う。(石黒幸枝 歯科衛生士・京滋 摂食・嚥下を考える会世話人)いつまでも食を楽しめる町づくりリレー連載⑥「食べる」を支える―私の視点―三方よしで食支援

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