新聞クイント2018年8月(お試し版)
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2018年8月10日(金) 第272号2 今月のニュース社 会日本口腔インプラント学会の新理事長宮﨑 隆昭和大学副学長・歯学部長、教授 6月26日(火)、愛知県歯科医師会館において、「愛知県歯科医師会・愛知県東浦町オーラルフレイル調査研究事業」について記者発表が行われた。本事業は、厚生労働省による平成30年度老人保健健康増進等事業公募に対し、事業名「歯科検診と事後フォローによる高齢者の自立支援と重症化予防への検証及び口腔機能の維持と栄養・運動を含めた総合プログラム検証事業」が採択され、厚生労働省老健局事業としては全国初の取り組みとなる。近年注目を集めているトピックということもあり、会場には多くの報道関係者が参集した。 会見には、堀江 裕氏(東海北陸厚生局局長)、神谷明彦氏(愛知県東浦町町長)、栗田賢一氏(愛知学院大学歯学部長)、冨 栄一氏(半田歯科医師会会長)、内堀典保氏(愛知県歯科医師会会長)、椙村豊彦氏(愛知県歯科医師会副会長)が出席し、事業内容や今後の方向性などについて概説された。 本事業は、「オーラルフレイル」が全身の健康にどう影響するかのエビデンスを求めるため、東浦町の協力を得て、65歳以上の要介護・要支援者を除く町民に対して口腔機能検査を展開。口腔機能の状態の把握・分析を行い、その結果から口腔機能の改善を進めていくことにより、全身の健康および介護予防、さらには地域包括ケアシステムの推進へ寄与することを目的としている。また、愛知県では「あいちオレンジタウン構想」の中で認知症対策として、東浦町周辺地域が一体となって「認知症に理解の深いまちづくり」の先進モデルを目指すための取り組みもその背景にあり、オーラルフレイル、フレイル、認知症の関連について、今後の政策のためにも重要な調査となると位置づけている。全国初、「オーラルフレイル」調査研究事業がスタート(一社)愛知県歯科医師会記者発表で挨拶する愛知県歯の内堀典保氏。公益社団法人として社会的責任を果たしたい 会員数15,000名以上を擁する国内最大規模の日本口腔インプラント学会。専門医のあり方が問われる昨今、本年6月より新理事長に就任した宮﨑隆氏(昭和大学副学長・歯学部長、教授)は、国民のQOLの向上を図り、健康長寿に貢献するインプラント治療の評価をどのように高めていくのか。宮﨑:本学会は、2011年12月の国民生活センターによる「歯科インプラント治療に係る問題」の報道発表を受けて、インプラント治療に対する国民の信頼を取り戻すために各方面から改善を進め、渡邉文彦前執行部のもとで専門医制度のカリキュラム、治療指針、インプラントカード・チェックリストなどを整備してきました。 一方で、インプラント治療を受けた患者の高齢化にともない、地域の医療・介護現場では専門的対応が必須となっています。そこで、9月14日から16日に大阪で開催される第48回学術大会では、昨年の仙台大会と同様の「インプラント治療が拓く未来」というテーマのもと、人生の最期までインプラント患者のQOL回復と尊厳に責任を果たすべく、「超高齢社会に対する責任」について、馬場俊輔大会長から大阪宣言を行う予定です。 また、わが国が高齢化で世界をリードしている現状を鑑み、世界に情報を発信すべく英文論文を発表します。さらに、日本歯周病学会と共同でインプラントのメインテナンスに関する学会見解をまとめています。その他、訪問歯科診療におけるインプラントのトラブル対応について、治療に関する7項目の提言をまとめたポジションペーパーを公表する予定です。 今期の執行部の活動目標は、会員サービスのいっそうの向上です。学術講演会の開催、学会誌ならびに会員の認定制度のさらなる充実です。学会誌については、会員の臨床研究や症例報告など、投稿しやすい環境整備を図るとともに、総説・解説の論文を掲載して会員への有益な情報提供に努めます。国際誌(IJID)については、高いインパクトファクターの取得・維持に努力します。認定制度については、専修医ならびに専門医を申請しやすい環みやざき・たかし1978年、東京医科歯科大学歯学部卒業。1984年、同大学院歯学研究科修了(歯学博士)。1991年、昭和大学歯学部教授。2003年、同大学歯学部長。2018年6月、(公社)日本口腔インプラント学会理事長。境整備を行い、試験の運営方法も改善を図り、多くの会員が専門資格を取得して国民の健康増進に還元してほしいと思います。 本学会は前身の日本歯科インプラント学会と日本デンタルインプラント研究学会の合併からまもなく50周年を迎えます。多くの先人の努力と功績を振り返り、つぎの50年、100年に向けて公益社団法人として社会への責任を果たすことが求められると考えています。そのために、関係諸機関・団体と連携して口腔インプラント学の学問体系を確立し、科学的根拠に基づいたインプラント治療にかかわるガイドライン・治療指針、さらに教育プログラムの制定を行い、国民へより良いインプラント治療を提供できるように舵取りをしてまいります。 私は訪問専門で歯科医院を開業している。歯科医院といっても訪問のみで外来診療は行わないため、診察ユニットはなく普通の机と椅子がある事務所のようなかたちだ。歯科医師を志した頃はインプラントや審美歯科といった治療に興味があったが、東日本大震災をきっかけに「口から食べること」の重要性を実感し、訪問歯科や摂食嚥下について必死に学んだ。 「口から食べること」は、ただ口の環境を整えれば良いというわけではない。いくら義歯が合っていても、飲み込む能力に合った「食事の形態」や食べる時の「姿勢」など、「食べ方・食べさせ方」が合っていないとうまく食べられない場合もある。また、摂食嚥下障害は全身的な問題が複雑に関わっていることも多く、歯科だけでは対応が困難であり、多職種との連携が重要になる。地域によっては摂食嚥下に関わる医療資源が乏しいこともあるが、専門職がいない時は他職種が専門領域をカバーするべきである。私自身、食支援のために口腔ケアという歯科の専門を超えて姿勢を整え、嚥下機能を評価し、食事形態を選択し、食事介助を日々の診療で実践している。 私が理事を務める「NPO法人口から食べる幸せを守る会」は全国各地で「実技セミナー」を開催し、食支援のための包括的なスキルを基礎知識とともに提供している。多職種だけでなく患者家族も参加する。それだけ「食べる支援」は今必要とされているのだ。しかし、実際にそのスキルをもっている人材はまだまだ少ない。口から食べることは日常であり、幸せに暮らすためのささやかな願いである。そのような「食べたい願い」を叶えられる仲間を、私は訪問歯科やNPOの活動を通じて増やしていきたい。(一瀬浩隆 愛知県開業・NPO法人口から食べる幸せを守る会理事)食べたい願いを叶える包括的な食支援をリレー連載⑦「食べる」を支える―私の視点―専門の枠を超えて

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