新聞クイント2018年9月(お試し版)
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2018年9月10日(月) 第273号2 今月のニュース社 会創立70周年を迎えたニッシンの「顔」横江浩司株式会社ニッシン代表取締役社長 7月19日(木)、歯科医師会館において、日本歯科医師会(以下、日歯、堀 憲郎会長)による臨時記者会見が開催された。本会見は、平成30年7月豪雨災害への対応状況と支援策に対する説明を行うことを目的とするもの。日歯では、先の大阪府北部地震を受けて日本歯科医師会内に対策本部を設置したが、対策本部の対象を拡大して、このたびの豪雨災害の対応にもあたっている。 堀会長より7月15日、16日に実施された被害地域の現地視察の概要が説明され、つぎに各担当所管役員から報告が行われた。日歯は、被害状況の確認および地域行政と連携して避難所対応などを行う当該県の歯科医師会と情報や意見を交換することを目的として、岡山県、広島県、愛媛県で被害地域の現地視察を行った。その結果、避難所における口腔健康管理の徹底や被災者の歯科保健指導などへの対応については、3県とも県内における歯科医師会のマンパワーでカバーできるという方向性が示されたと判断した。また、全国の都道府県歯科医師会には準備待機を依頼していたが、これを受け、待機態勢の解除を通知した。 今後の対応としては、被害地域への支援物資の供給などの後方支援を行っていく予定。現地歯科医師会、行政などとの密接な情報交換を行いながら、これまでの震災対応で蓄積された情報を生かして助言などを行っていくとした。特に長期の避難所生活や仮設住宅生活においては、誤嚥性肺炎の発症の予防など、地域の歯科医師会と連携しながら対応していくと述べた。 また、日歯としても厚生労働省と連携し、被災した歯科医療機関の復旧支援についても強力に進めていくとの見解を示した。平成30年7月豪雨災害への対応状況と支援策を説明日歯臨時会見被害地域の現地視察の概要を説明する堀会長。歯科医療従事者の皆様の幸せや成長をサポートできる企業であり続けたい 歯科材料・模型のトップメーカーとして、本年11月に創立70周年を迎える株式会社ニッシン。「Dental Education Company」として「教育」にこだわり続ける企業姿勢がユーザーにも評価され、その地位を確固たるものにしている。本欄では、横江浩司氏(同社代表取締役社長)にモノづくりの根底にある「教育」「Education」に対する想いと、今後の展開についてうかがった。横江:弊社は、昭和23年11月に先代社長である私の祖父が「日進歯材研究所」として京都市南区にて創業したことが始まりです。その10年後の昭和33年に歯科実習用顎模型の製作・販売を開始し、歯科教育機関をはじめとする教育現場で弊社製品が広く使用されるようになったことで、現在では歯科材料と歯科教育用模型のニッシンという地位を確立することができました。今後も引き続き、この2つの事業を主軸として事業拡大を図っていきたいと考えています。 歯科材料については、急速なデジタル化が進むなかで時代のニーズに対応するために、関連企業と連携して研究・開発分野を強化していく必要があると考えています。また、モノづくりに必要不可欠な人材についても、この2、3年で強化しています。 歯科教育用模型については、おかげさまで国内トップシェアを誇るまでの事業に成長することができていますので、国内シェアを維持するだけでなく現在世界約50か国の教育機関で使用されている領域をさらに拡大していきたいと考えています。すでに中国やマレーシア、メキシコなどにオフィスを開設していますので、今後は新興国市場への展開も視野に入れていきたいと思っています。 弊社が70周年、100周年と永続的に企業活動を行うためにもっとも重要であり大切にしていることは、やはり会社の先輩方が築き上げてきた知識や技術といったさまざまな知的財産を守り、つなげていく人材の育成です。歯科医療従事者の人材育成と同じように、若手社員が一人前になるには時間よこえ・こうじ株式会社ニッシン代表取締役社長。大学卒業後、歯科技工士学校、海外留学を経て、同社入社。2003年より現職。がかかることは周知のとおりですが、社員教育は教えるだけでなく能力を引き出すことも大切です。モノづくりにおいて、現場のことは現場の社員がいちばん理解しているわけですから、社員が考え出したさまざまなアイデアや意見を尊重し、それらを付加価値のある形にして市場に効果的かつ効率的に提供できる人材の育成を目指しています。 創立70周年といっても記念式典のような対外的なイベントなどは実施しませんが、これを機に老朽化が進んだ物流倉庫の改修工事や手狭になった本社社屋の建て替えなどを予定しています。 最後に、歯科医療は生涯教育・学習なくして進歩と発展はありません。私たちはそのような視点から、つねに歯科医療従事者の皆様の幸せや成長をサポートできる企業であり続けたいと考えています。 食べ物が入る場所は「口」、排泄物が出る場所は「肛門」で、それは一本の管でつながっているはずなのに、私たちの意識の中では別々になっていないでしょうか。 食べることには「グルメ」なんていう魅力的なフレーズがありますが、出すほうにはないどころかタブー感すらあります。当たり前ですが、私たちは食べて栄養を摂り、不要なものを排泄することができなければ、生きていけません。「食べると出す」をセットで考えたいリレー連載⑧「食べる」を支える―私の視点―「食べると出す」の重要性 この「食べると出す」の重要性が顕著に表れるのが、災害時です。災害時は、断水、停電、給排水設備の損傷などにより、水洗トイレが使えなくなります。私たちはトイレが不便になったり、不衛生になったりすると、食べ物や水分を摂ることを控えがちになります。すると途端に体調を崩し、エコノミークラス症候群などで関連死を引き起こすこともあります。また、水分を控えた状態、つまり口の中が乾燥して歯磨きやうがいも不十分な状態で食事をすることで誤嚥性肺炎になることもあります。 被災者の心身の健康を確保するには、「食べると出す」の両方のケアが不可欠です。これはソフト面だけではなく、ハードとしての環境も求められます。安心して食べるためには、口腔ケアを行う場として洗面環境の整備が必要ですし、安心して排泄するためには、清潔で使い勝手の良いトイレ環境の整備が必要です。どちらか一方だけではダメです。両方の環境が整ってこそ、「食べると出す」が成り立ちます。言い換えると、「食べる」を支えているのはより良く出すことですし、「出す」を支えているのはより良く食べることです。 「食べると出す」の連携を生み出すには、それぞれの分野や業界がつながることが必要です。たとえば「災害時の食べると出す」をテーマにフォーラムを開催し、情報交換する場をつくるのはいかがでしょうか? (加藤 篤(特非)日本トイレ研究所代表理事)

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