新聞クイント2018年11月(お試し版)
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2018年11月10日(土) 第275号2 今月のニュース社 会 9月27日(木)、神奈川県歯科医師会館において、神奈川県歯科医師会(以下、神奈川県歯、鈴木駿介会長)による平成30年度食力研修会が「今、食力を考える~食べることから健康寿命を伸ばす~」をテーマに開催され、会員のほか、神奈川県歯科衛生士会会員、同県栄養士会会員、東京都健康管理士会員が多数参集した。 開会後、中條和子氏(神奈川県健康医療局保健医療部健康増進課副技幹、歯科医師)は、神奈川県における食(栄養・オーラルフレイル)の取り組みについて披露。本年度は飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授、医師)らと海老名市をモデル地域とした大規模介入調査を開始させていることなども紹介した。 つぎに、飯島氏は、かかりつけ歯科医をもち定期的にメインテナンスを受ける大切さや、国家戦略としてのオーラルフレイル予防をさまざまな方法で普及・推進していくかについて力説した。 また、渡邊 裕氏(東京都健康長寿医療センター研究所社会科学系研究副部長、歯科医師)は講演の中で、生活習慣病のコントロールがフレイル対策の中核であると強調するとともに、しっかり噛んで食べて話すことができる「国民の笑顔を守ること」の大切さについても述べた。 その後、五味郁子氏(神奈川県立保健福祉大栄養学科准教授、管理栄養士)は、低栄養が身体にもたらす影響などについてデータをもとにわかりやすく解説。低栄養に陥らないための食事の摂り方に関するアドバイスや、管理栄養士との連携についても言及した。 最後に、全演者によるディスカッションが行われ、会場からも積極的な意見が出されるほど“食力”への関心の高さがうかがえる研修会となった。平成30年度食力研修会、多職種の注目集め盛会に神奈川県歯科医師会ディスカッションに臨む演者ら。 体重減少や骨格筋減少などといった栄養障害は、がん治療の忍容性を低下させることが知られています。がん治療の場では抗がん剤による食欲不振や口内炎、病変や手術後の影響などさまざまな理由で口から十分な食事が摂れず、点滴や経管栄養といった他の手段に頼ることがあります。そのため、がん治療に携わる多くの病院では医師、看護師、管理栄養士、薬剤師ら多職種による栄養サポートチームがあり、栄養評価やリレー連載⑩「食べる」を支える―私の視点―「口から食べる」ための「備え」栄養管理を行っています。治療中の身体的な栄養の充足はもちろんのこと、いよいよ限られた時間の中で好物を食べたい、家族と食事をしたいといった希望を叶えるために「口から食べる」ことが求められることも少なくありません。そのため私たち歯科専門職種もチームの一員として口腔内の合併症への対応や、口腔機能の維持、回復といった役割を担っています。しかし、もとの口腔環境や患者さんの全身状態によっては「口から食べる」ための機能回復が容易ではないこともあります。患者さん自身から「元気なうちにきちんと治療しておけばよかった」という思いをうかがうこともあり、また私たちも患者さんにとっての限りある時間内に十分な対応が果たせず悔しい思いをすることもあります。 今年は各地での災害もあり日常の備えを意識することも多かったと思います。生きているうちにいつ遭遇するかわからないという点では、がんなどの大病も同じです。大病を患わないに越したことはないでしょうが、「口から食べる」ための「備え」として、健康なうちから適切な歯科治療を受けていただく。周術期口腔機能管理のような大病に罹ってからの医科歯科連携に限らず、日ごろから「備え」を提供する意味でも、私たち歯科専門職種にできることがたくさんあるのではないかと考えています。(光永幸代 歯科医師・神奈川県立がんセンター歯科口腔外科)日ごろから歯科の備えも。デザインを追究するプロダクトデザイナーFritz Frenklerf/p design代表売れるものをつくるだけではなく、企業のブランドの価値を高めることも大切 歯科診療ユニットや超音波スキャナーなど、さまざまな工業製品のデザインを手掛ける著名なプロダクトデザイナーのFritz Frenkler氏(f/pdesign代表)が考えるデザインとブランディングのあり方とは――。本欄では、このたび来日したFrenkler氏にユーザーに愛される製品をつくるためのデザインやものづくりの考え方についてうかがう。Frenkler:一般的にデザインと呼ばれるものは形だけではありません。われわれプロダクトデザイナーはアーティストではありませんので、リサーチや製品の改良を検討したり、新しいシステムを考えたり、さまざまな情報をもとに製品を具現化して市場に伝えることが求められます。もちろん、ものづくりにはデザインの美しさだけでなく、目に見えない機能性や使いやすさが重要です。特に歯科医療従事者の先生方は歯科医療を提供するわけですので、患者さんに最良の治療をするための機能性や操作性は不可欠です。 私がデザインにかかわった歯科診療ユニットSoaricや歯科用X線診断装置X800、新発売されたSpaceline EX(株式会社モリタ製作所)は、それらの要素が集約されている製品として高い評価を受けています。国によって文化や宗教が異なるように、製品についてはさまざまな意見があるなか、ユーザーに評価されるためには、市場のことをよく理解しなければなりません。そして開発チームだけでなく、立場の異なるユーザーとも一緒に考えなければ、評価されるものづくりはできません。 かつてデザインの中心は美しさの追求と考えられていましたが、実際にはそれだけでなく、機能性やユーザビリティが求められます。そこにはEcology(生態学)、Sociology(社会学)、Psychology(心理学)、Philosophy(哲学)などを考慮したデザイン、さらには目に見える三次元と目に見えない(匂いや薫り、音など)四次元のデザインが必要です。 ユーザーに長く使っていただく(愛される)製品をつくるためには、売れるものをつくるだけではなく、企業のブランドの価値を高めることも大切なのです。市場のデータを収集し、製品開発にかかわるすべての皆さんが情報を共有することで、ブランドの将来像を見据えることが可能となります。 長い歴史のある企業がどのようにしてブランドや企業の哲学(DNA)を守り続け、企業全体のあり方や存在価値を示しているかには理由があります。ものを通して、文化を提供しているわけです。いうまでもなく日本のものづくり文化は世界的にも高い評価を得ています。そこに国際的な視点からの考え方を取り入れることで、日本のブランドを活かした新しいサービスや製品が生まれてくるでしょう。フリッツ・フレンクラー2000年にドイツ・フランクフルトにf/p design GmbH を設立。2017年には京都にfp design co., ltd.を開設。ミュンヘン工科大学建築学部の教授、iFプロダクトデザイン賞の審査委員長を務める。プロダクトデザイン分野における要職多数。

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