新聞クイント2019年3月(お試し版)
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2019年3月10日(日) 第279号2今月のニュース学 会待」の2つのシンポジウムおよび特別講演「最新テクノロジー(VA/AR)が医療現場にもたらす変革」が行われた。特別講演で登壇した杉本真樹氏(HoloEyes株式会社取締役)は、医科において開発されているVR/AR/MRなどの3D空間手術支援を紹介した。 また、日本歯科医学会連合との共催シンポジウム「より質の高いインプラント治療を目指す歯科医師と歯科衛生士と歯科技工士の連携」も行われ、情報共有の重要性が訴えられた。 その後、専門医教育講座では「インプラント治療の長期経過とリカバリー」と題して細川隆司氏(九州歯科大学)が登壇した。特にインプラントオーバーデンチャーにおいて生じる問題点について述べられた。 2日目は「インプラント治療のトラブルシューティング」と「Learning from failure」の2つのシンポジウムが行われたほか、特別講演では「インプラント治療を通して歯科医療の未来を考える」と題して、小宮山彌太郎氏(東京都開業)が講演を行い、盛況のうちに閉幕した。 2月10日(日)、11日(月)の両日、京王プラザホテル(東京都)において、公益社団法人日本口腔インプラント学会第38回関東・甲信越支部学術大会(飯島俊一実行委員長、矢島安朝大会長)が「インプラント治療を通して歯科医療の未来を考える」をテーマに、過去最高となる約1,400名が参集し、盛大に開催された。 1日目は、矢島安朝大会長(東京歯科大学)の挨拶ののち、「骨増生法の現状と将来への展望」と「デジタルデンティストリー 現状と将来への期関東・甲信越支部、過去最高となる約1,400名が参集日本口腔インプラント学会今月のニュース社 会講演を行う恒石美登里氏。大会長を務めた矢島安朝氏。定健診・保健指導の結果からなるデータベースによるデータを指し、いわゆるビッグデータの1つとして位置付けられるものである。もとは医療費適正化計画に関連する調査・分析のためのデータ蓄積であったが、医療サービスの質の向上などを目指し、2013年から大学などの第三者機関へのNDB提供が開始され、2016年からはオープンデータの公表も始まっている。歯科保健医療分野における活用例が少なく未知数であることから、その全貌と活用の可能性を探るべく本シンポジウムが企画された。 シンポジストには、医療保険分野においてNDB研究経験の豊富な野田龍也氏(奈良県立医科大学)、歯科医療分野で初のNDBデータ解析に取り組んだ恒石美登里氏(日本歯科総合研究機構)、NDBデータ解析論文の投稿を行った鈴木誠太郎氏(東京歯科大学)の3名が登壇し、それぞれの立場と経験からNDBデータのメリット、デメリットなどについて紹介した。質疑応答では会場より多数の質問が寄せられ、活発な議論がなされた。歯科におけるNDBデータ活用について注目集まる平成30年度口腔衛生関東地方研究会大会 2月9日(土)、東京歯科大学水道橋校舎(東京都)において、平成30年度口腔衛生関東地方研究会大会 (杉原直樹大会長、安井利一幹事長)が開催され、歯科医療従事者が参集した。 最初に、上條英之氏(東京歯科大学)の座長のもと、シンポジウム「NDBデータを利用した歯科保健医療分野への活用」が行われた。NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース:National Database)は、2009年度以降に医療機関において発行されたレセプト(診療報酬明細書)に加え、特歯科病名の普及・定着と新病名の創出を目指す柳川忠廣(公社)日本歯科医師会副会長やながわ・ただひろ1979年、東北歯科大学(現奥羽大学歯学部)卒業。浜松市歯科医師会、静岡県歯科医師会の理事を経て、2013年より静岡県歯科医師会会長。2016年より日本歯科医師会副会長。また、日本歯科専門医機構副理事長を務めるなど要職多数。オールデンタルの取り組みのなかでリーダーシップを発揮したい 平成30年度診療報酬改定において、「口腔機能低下症」「口腔機能発達不全症」の2つが歯科の新病名として保険収載されたことは記憶に新しい。また現在検討中の2つの新病名については、平成32年度診療報酬改定に向けた対応として期待が寄せられている。本欄では、日本歯科医師会に設置されている「新病名検討ボード」で歯科の新病名の創出を目指す柳川忠廣 氏(日本歯科医師会副会長)にお話をうかがった。柳川:歯科の新病名については、平成26年6月に開催された新しい歯科病名に関するワークショップで日本歯科医師会や日本歯科医学会の役員らで検討し、計99病名案が提示されました。その後、整理・検討を重ね、平成27年に保険収載で最優先すべき4つの病名が候補として挙げられました。平成30年度診療報酬改定で「口腔機能低下症」「口腔機能発達不全症」が保険導入されたことは、歯科界にとってたいへん喜ばしいことです。しかし、日歯としては収載後の評価・検証も含め、臨床現場での普及・定着への取り組みが最優先課題と考えています。 「口腔機能発達不全症」については、日本小児歯科学会や小児歯科領域の専門家の先生方を中心に対応されていたわけですが、収載を契機に臨床現場で対応するための知識や技術の習得する研修会は、つねに満員となるほどです。また、「口腔機能低下症」についても、これまで潜在化していた高齢者への対応が顕在化することで、臨床現場の意識の底上げや医療・介護分野との連携にも寄与するものと期待しています。 もちろん、2つの新病名「生活習慣性歯周病」と「口腔バイオフィルム感染症」については、保険収載を目指し検討ボードで継続して議論中です。 新病名が保険収載されるためには、たとえば病原性を評価する臨床検査やガイドラインが必要となります。検査における機器や材料の開発、申請・承認という流れを経て、臨床現場に広く導入されるためには、やはり簡便、短時間、低コストの検査装置の開発が求められますので、機器や材料の開発を行う歯科産業界、臨床データの研究・分析を行う学会、そして私たち臨床現場の三者が協同し、「オールデンタル」で取り組む必要があるわけです。 もちろん保険収載はゴールではありませんが、今回のように保険導入されたことで小児と高齢者の口腔機能にあらためて注目が集まったことは、堀執行部が掲げる歯科界の活性化に大きく寄与できると言ってよいでしょう。 多様な口腔機能を生涯にわたってしっかり管理していくことを私たち臨床現場の歯科医療従事者が考え、それを機器や材料面で支えてくださる歯科関連企業、そして臨床データの研究や分析によってエビデンスを蓄積する学会という「臨・産・学」が連携していく――。このイメージをつねにもち続けながら、日歯はオールデンタルの取り組みのなかでリーダーシップを発揮したいと考えています。

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