新聞クイント2019年12月(お試し版)
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2019年12月10日(火) 第288号2わたなべ・しげる明海大学保健医療学部口腔保健学科教授。日本子ども虐待防止歯科研究会会長。日本子ども学会理事。日本小児口腔外科学会理事。日本健康医療学会常務理事。2019年9月、イグ・ノーベル化学賞を受賞。今月のニュース社 会の中で超高齢社会における「高齢者型」の歯科医療の需要の増加にともなう対応として、口から食べる機能の重要性や今後の施策など、患者・国民・歯科医師の視点で課題をあらためて議論すべきと訴えた。 引き続き、テーマ2「2040年を見据えた歯科ビジョンに求めること」では、西澤敬二氏(損害保険ジャパン日本興亜株式会社代表取締役社長執行役員)による基調講演が行われた。西澤氏は同社で取り組んでいる介護事業における成功事例をはじめ、利用者の口腔機能を支えるために地域の歯科医療機関と連携して口腔ケアに取り組んでいることなどを紹介し、日歯が今後取りまとめるビジョンの方向性に期待を寄せた。 その後のテーマ3「その他」では、外部委員からこれまでの検討会の補足も含めたさまざまな意見が出された。 なお、当初は3回の会合を経てビジョンが取りまとめられる予定であったが、第4回が開催される予定。 今後の歯科医療のあるべき姿が示されるビジョンに注目が集まる。 10月23日(水)、歯科医師会館において、日本歯科医師会(以下、日歯、堀 憲郎会長)による「2040年を見据えた歯科ビジョン第3回検討会」が開催された。 座長を務める堀会長の挨拶の後、テーマ1「政策的視点からみた歯科ビジョン」では、武田俊彦氏(前厚生労働省医政局長)による基調講演「我が国の医療政策とビジョンの影響 今後の歯科医療に必要なビジョン」が行われた。武田氏は、医療費の動向や医療政策について多数の資料を供覧し、そ歯科ビジョンの取りまとめは次回以降へ日本歯科医師会今回は外部委員17名が出席した。イグ・ノーベル賞を受賞した歯科医師渡部 茂明海大学保健医療学部口腔保健学科教授今月のニュース大 学講演を行う渡部 茂氏。授)が講師として招聘された。 会場では、三浦廣行会長(岩手医科大学副学長・歯学部長)による開会の挨拶の後、羽村 章専務理事(日本歯科大学生命歯学部教授)より私立歯科大学・歯学部の概要ならびに活動が紹介された。 引き続き、渡部氏が「口や歯の健康を守る唾液の科学」と題して登壇し、まずアイスブレイクとして今回のイグ・ノーベル賞について披露。自身が25年前に発表した研究「5歳児が1日に分泌する唾液量の測定」の中で、大人が被験者である5歳の子どもにお願いして研究材料の唾液を採取している姿の滑稽さが選考委員らの目に留まって今回の受賞につながったことなど、授賞式や当時の実験の様子を紹介して会場を沸かせた。その後、口腔内の唾液クリアランスの働きや咀嚼と唾液の関係性など、自身の研究内容を供覧しながら歯や口の健康維持に大きな役割を果たしている唾液の重要性についてわかりやすく解説した。講演終了後は、多数のメディア関係者が渡部氏に質問するなど、注目を集めていた。第10回歯科プレスセミナー、渡部 茂教授が登壇(一社)日本私立歯科大学協会 10月25日(金)、アルカディア市ヶ谷(東京都)において、「~急発展を遂げる、歯科医療が見据える国民健康の最前線~第10回歯科プレスセミナー」(一般社団法人日本私立歯科大学協会主催、三浦廣行会長)が開催された。本セミナーは、マスメディアを対象に今後の歯科が担う役割の大きさや魅力について講演を行い、情報を広く国民に伝えることを目的として2010年より開催されてきた。今回は、本年9月にイグ・ノーベル賞を受賞した 渡部 茂氏(明海大学保健医療学部教すべての歯科医療従事者は科学者(Scientist)であるべき 「人を笑わせ、そして考えさせる研究」に贈られる「イグ・ノーベル賞」。同賞常連国の日本が13年連続受賞の快挙を達成した。その研究テーマは口の健康維持に大きな役割を果たしている「唾液」。本欄では、受賞した渡部 茂氏(明海大学保健医療学部口腔保健学科教授)にその内容について解説していただくとともに、歯科界に対するメッセージをいただいた。渡部:私たちグループが1995年に発表した研究「5歳児が1日に分泌する唾液量の測定」が今回のイグ・ノーベル賞化学賞に選ばれました。大人が5歳児の唾液を真剣に採取している姿が今回の選考委員の目に浮かんだのでしょう。すでにテレビやインターネットなどで当日の授賞式の様子を見られた方はおられるかもしれませんが、ハーバード大学で行われた授賞式でのスピーチの際、25年前に被験者であった私の子どもたちに当時の実験の様子を再現させたところ、会場は笑いの渦に包まれました。 当時、5歳児の安静時唾液量の研究データはありましたが、食事中の唾液量は明らかにされていませんでしたので、私たちはその研究を行いました。そして、6種類の食物咀嚼中の平均唾液量を求め、5歳児が1日に分泌する唾液量が約500mlという推定値を得ました。 研究者に限らず臨床に携わっている歯科医師をはじめとするすべての歯科医療従事者は、科学者(Scientist)であるべきと思っています。患者さんにとってより良い歯科医療を提供するためにはどうすればよいか、日々の臨床の疑問や「なぜ」といった視点など、つねに考える姿勢をもっていただきたい。近年では、効率化や最適化ばかりを重視する人たちが多い傾向にありますが、研究や臨床は一朝一夕で成し得るものではありません。私たちが真面目に取り組み、1995年に発表した研究が今回のように突然陽の目をみることもあります。私たちの研究論文は今年度は9,000件以上の推薦論文の中からノーベル賞受賞者を含むハーバード大学やマサチューセッツ工科大学の教授陣の複数の選考委員によって選ばれましたが、世界の中で目に留めていただくためには最低限として英語での論文投稿が不可欠です。ぜひとも、海外のジャーナルに積極的に論文を投稿していただきたいと思います。 また私は、本年4月から歯科衛生士を養成するために新設された4年制の保健医療学部口腔保健学科で教鞭を執っています。多職種連携医療の必要性が叫ばれるなか、今後歯科衛生士の果たす役割はますます大きくなっていきますので、学生のうちから口腔と全身の関係などの知識を習得し、資格取得後に臨床現場の即戦力となれるような歯科衛生士の育成に尽力したいと考えています。 最後に、今回の受賞によって、国民の歯科に対する関心をより高めることができたのではないかと思っています。歯や口の健康が全身の健康と深く関連していることが明らかになってきている今こそ、歯科界の積極的な情報発信を期待しています。音波式電動歯ブラシ歯科専用ハイドロソニック プロ◎販売元:東京都台東区上野7-6-9 http://www.yoshida-dental.co.jp ◎輸入元:株式会社クラデンジャパン(スイス クラデン社 日本法人) スイス生まれのイノベーションが日本に上陸辿りついた歯ブラシの理想形SO PROFESSIONAL, SO SIMPLE

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