新聞クイント2020年8月(お試し版)
2/3

2020年8月10日(月) 第296号2今月のニュース政 治 6月26日(金)、歯科医師会館において、日本歯科医師連盟(高橋英登会長)による定例記者会見が開催された。 会見の挨拶で高橋会長は、新型コロナウイルスの影響により歯科医院全体の経営が苦境に立たされている現状を示し、そのようななかでも歯科医院においてクラスターが発生していないことは、「普段からスタンダードプリコーションを徹底していることの証左」と強調。また、日本の新型コロナウイルス感染者数が世界的にみても少ない要因の1つは国民皆保険制度であるとし、これまで各々の歯科医院が自前の経費で感染予防対策を実施してきたことを含め、限られた収入で歯科医療を支えている医療従事者に賛辞を送った。さらに村岡宜明副会長の言葉を引用し、「もっとも大切な社会インフラは医療機関である」と訴え、新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の多くが基礎疾患として歯周病に罹患していたことを挙げ、ウィズコロナ時代における口腔の環境改善の必要性について熱く語った。 挨拶の後、浦田健二理事長より会見前に行われた第140回評議員会について報告がなされた。評議委員会では、次期参議院比例代表選出議員選挙に歯科代表候補者を推薦して臨むことが可決されたこと、あわせて候補者選考委員会による第1回会議がきたる7月16日に開催されることなどが承認された。また、質疑応答では記者団から候補者擁立の時期について「年内には決めたいと考えている」と意欲をみせた。組織内候補者の今後の動向に注目が集まる。日歯連盟、次期参院選候補者擁立を決定日歯連盟定例会見今月のニュース政 治加藤厚労大臣に令和3年度制度・予算で要望書を提出日本歯科医師会 7月1日(水)、日本歯科医師会(以下、日歯、堀 憲郎会長)は加藤勝信氏(厚生労働大臣)を訪問し、要望書「令和3年度制度・予算に関する要望について」を提出した。 日歯として、令和3年度制度・予算要望の重点的な要望項目である、①地域包括ケアシステムにおいて切れ目なく歯科医療・口腔保健が提供される体制の構築、②医療安全対策への対応・院内感染対策等の充実強化、③健康寿命の延伸のための新しい生活様式の中でも重要である歯科保健医療の推進、④健康を支える歯科健診体制の充実、⑤ICTを活用した医療提供体制の取り組み――の5項目を要望。その中で、佐藤 保副会長からは特に重点項目として「病院における歯科の設置、歯科医師の配置の推進」「オーラルフレイル対策の推進」「生涯にわたり途切れない歯科健診制度の定着」の3点の説明がなされた。 堀会長は具体的な取り組みとして、病院の歯科医師配置の推進については「歯科の活用で採算も向上している病院の事例を調査し展開する事業の立ち上げ」、オーラルフレイル対策の推進については「実務現場となる市町での推進事業への助成」、歯科健診制度の推進については「過去3年間の厚労事業の結果をオープンにし、その結果をふまえた展開」などを求めた。 なお、要望書の説明に先立ち堀会長は、5月11日に要望した新型コロナウイルス感染症に関する医療機関の支援要請への対応に謝意を示し、今後も引き続きの対応を求めた。災害の教訓を生かすための仕組みづくりが必要 令和2年7月豪雨が発生し、すでに被災地では災害対策本部が設置されているなか、今回は新型コロナウイルス感染症の影響に配慮し、県外からの支援については慎重な対応が求められている。本欄では、災害時の歯科保健医療体制ならびに支援のあり方について、中久木康一氏(東京医科歯科大学大学院助教)にお話をうかがった。中久木:災害時の歯科保健医療の役割として、医療と保健・啓発の2つに分類することができます。平時より提供している機能のうち必要なものを継続するとともに、新たなニーズに対する個別的ならびに集団的な対応やアプローチによって、地域の歯科保健医療を維持することが求められます。 災害時に歯科が守るべき機能として「食べる」ための口腔機能があります。特に、誤嚥性肺炎をはじめとする災害関連疾病の予防には、要介護高齢者や障がい者・有病者に対する口腔衛生管理や口腔機能管理が重要となります。現場としては、普段から施設や在宅などにおいて訪問活動などされている歯科衛生士の活躍や、「食べる」機能を維持するための多職種と多組織が連携することが求められます。 地域への支援(公助)は、災害対策基本法あるいは災害救助法に基づき国や地方自治体がマネジメントして行われます。今回の豪雨のような自然災害時には、自治体と歯科医師会などで締結している救護協定に基づいた支援が行われます。一方、被災された歯科医師や歯科衛生士がみずから避難所に歯ブラシや洗口液などの口腔ケア製品を配付したり、歯科保健活動を行ったりする地域や身近な人同士の取り組みや助け合い(共助)は、個別に対応されることもあります。 災害時の歯科保健医療は、災害歯科コーディネーターが支援チームをまとめることが好ましいわけですが、歯科の行政職は少なく、これらの役割も地域の歯科医師会や歯科衛生士会などで担当することがありますので、日本歯科医師会をはじめ各関係団体において災害歯科コーディネーターを養成するための研修会が開催されています。最近は全国各地で大規模災害が頻発している状況であり、災害支援にかかわる人材養成は急務といえます。 災害直後のことは振り返ることはできますが、次の災害に備えてどのように教訓を生かすかがとても重要です。しかし、普段から実践していないことは災害時にできるわけがありませんし、災害対策とは災害時に初めてスイッチを入れて機能するような特別なものではなく、普段から行っていることの延長でしかありません。そのためには、継続的かつ地域横断的な観点から協調しあうための規格化された情報共有が大切であり、人に依存するのではなく仕組み(システム)として考える必要があります。東日本大震災以降、災害時歯科保健医療における口腔アセスメント票の標準化や活用などに取り組んでいますが、今後は歯科におけるBCP(事業継続計画)の策定を含めた体制づくりが求められます。災害時の歯科保健医療の標準化を目指す中久木康一東京医科歯科大学大学院歯学研究科顎顔面外科学分野助教なかくき・こういち東京医科歯科大学大学院歯学研究科顎顔面外科学分野助教。東北大学大学院歯学研究科インターフェイスプロジェクト支援室助教。日本災害時公衆衛生歯科研究会世話人。著書に『繋ぐ―災害歯科保健医療対応への執念(分担執筆)』(クインテッセンス出版刊)がある。記者会見に臨む高橋執行部。左から瀬古口専務理事、堀 憲郎会長、加藤厚生労働大臣、佐藤 保副会長(写真提供:日本歯科医師会)。お問い合わせ、ご購入は03-5842-2272(営業課)または「歯学書.com」まで!お問い合わせ、ご購入は03-5842-2272(営業課)または「歯学書.com」まで!●224頁 ●A6判 ●定価本体:3,500円(税別)多職種連携に必要な共通言語、あなたは理解できていますか?多職種連携に必要な共通言語、あなたは理解できていますか?[監 著]一戸達也 石垣佳希 弘中祥司豪華執筆陣がわかりやすく解説!安藤有里子/石井良昌/石垣佳希/伊藤孝訓/一戸達也/岩渕博史/小笠原健文/枝広あや子/片倉 朗/嘉手納未季/上條英之/菊谷 武/熊谷賢一/佐藤裕二/澁井武夫/荘司洋文/杉原直樹/田中 彰/鳥山佳則/内藤克美/永尾 康/野村武史/長谷川篤司/濱田良樹/平田創一郎/平野浩彦/弘中祥司/藤井一維/船津敬弘/マイヤース三恵/丸岡靖史/宮田 勝/渡辺 久/渡邊 裕  (50音順、敬称略)

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る