ORAL Information 2019
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QUINT ORAL INFORMATIONクイント・オーラル・インフォメーション8電動歯ブラシの使用感を実感してもらう井原:電動歯ブラシの認知度は高いものの、「使ったことがない」という患者さんは多くいらっしゃいます。当院では、待合室ではなく、あえて診療室内に電動歯ブラシを置き、チェアサイドで歯科衛生士がすぐにすすめられるようにしています。実際に手に取り使用されたときに実感される爽快感は、かなりインパクトが大きいように感じています。田中:使用感を実感してもらうことは大切ですよね。当院ではPMTCの際に使用しています。歯のツルツル感など、その清掃力を実感してもらい「先ほど、この電動歯ブラシを使用したんです」とお伝えすると、関心を持っていただきやすいですね。中川:皆さんがいちばん疑問を持たれるのが「手用歯ブラシより磨けるのか?」というところだと思います。手軽さや効率性を求めれば、毛先の仕事量は電動歯ブラシのほうが優れており、データも示されています1)。このようなデータをふまえて患者さんに話すと、説得力があるように思います。片山:当院では、磨き残しが多い方やご高齢の方には率先して電動歯ブラシをすすめていますが、その際にも、データをもとにお話しするようにしていますね。中川:ご高齢の方は、やはり徐々に手で磨くことが不得手となっていきますからね。電動歯ブラシをすすめることで高い清掃性を取り戻せる方もいらっしゃいます。田中:たしかに、ご高齢の方は、とくに気に入ってくださる方が多い印象があります。刺激により唾液分泌量が増えることを実感できるようですね。受け入れてもらいやすいタイミングを見極める井原:すすめるタイミングでいえば、患者さんが「うまくいかないな」と思われたときにすすめていますね。データを主体に説明しても、習慣化された「自分のやり方」をお持ちの方には、なかなか受け入れてもらえないので、口腔内写真を撮影して磨き残しが増えていることを共有したときなどに「電動歯ブラシを使ってみませんか?」と提案しています。このタイミングというのは患者さんの性格や背景によりまったく異なるので、担当歯科衛生士と話し合い、個々にあわせておすすめしています。田中:当院は、メインテナンスから電動歯ブラシに移行される方が多い印象です。それこそ、年を重ねるとともに今まで磨けていたところが磨けなくなっていたり、傷がついてしまっていることがあります。歯科衛生士がそのあたりの変化を把握しているので、写真を撮影して、変化を共有したうえですすめています。片山:当院も、はじめは手磨きを中心に、補助用具なども併用しながら指導していきますが、なかなかプラークコントロールがうまくいかないな、というときに電動歯ブラシを導入していくことが多いです。中川:皆さんおっしゃるように、磨けている方より磨けていない方への導入のほうがプラーク除去率がより効果的だと思います。以前の研究で、手用歯ブラシではプラーク除去率に差があったグループが電動歯ブラシを使用した場合、除去率に差はなく、全員同じ程度磨けるというデータがあります2)。つまり、磨けていない人に「電動歯ブラシを使えばきれいに磨ける」というモチベーションのきっかけを与える意味ですすめるほうが受け入れてもらいやすいように思います。最初のきっかけは歯科医師が与え、歯科衛生士につなぐ中川:やはり、口の専門家である歯科医師や歯科衛生士が電動歯ブラシをすすめる、ということに説得力があると考えます。ただ、はじめのきっかけは歯科医師が与えたほうが、よりスムーズだと感じますね。田中:そうですね。手用歯ブラシとは価格帯も井原雄一郎Yuichiro IHARA井原歯科クリニック・院長田中真喜Maki TANAKA誠敬会クリニック・理事長中川種昭Taneaki NAKAGAWA慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室教授片山明彦Akihiko KATAYAMA有楽町デンタルオフィス・理事長OHIを歯科衛生士に任せきり、ということはないだろうか。患者に新たに電動歯ブラシを導入してもらうためには、歯科医師からのアプローチも、じつは重要だ。どのようなタイミングで患者とかかわっていくべきか、そのヒントを4名の歯科医師に教えてもらった。歯科医師からのファーストアプローチが鍵となる!電動歯ブラシの    スムーズな導入を考えるFrom Doctors

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